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中国の労働市場から見る「中国で求められているHR Tech」

近年中国のユニコーン企業が名を馳せ「中国発テクノロジー」が注目されています。
ではHRテクノロジーの領域ではどうなのか?

今回は中国という、約7.8億人もの労働人口を抱えている膨大な労働市場の特徴からくるHR課題を解決する「今、中国で求められているHR Tech」サービスについて紹介します。

BaiduやWeibo、Wechatなど、中国発の独自のウェブサービスが開発され、WeChatは2011年のリリース以降急成長を遂げ、2019年9月時点で月間アクティブユーザー数は11億人で、世界のメッセージングアプリの月間ユーザー数ではFacebookメッセンジャーに続いて3位となりました。

そして、これら中国発のサービスは、FacebookやGoogle、Amazon、Youtubeなどと同様の機能を有していながらも、中国の文化を踏まえた独自の進化を遂げています。日本でも、アプリやサービスの名前を聞いたことがあるという人も多いはずです。

しかし、HR Techについてはどうでしょうか?

世界の展示会でも、日本のHR系のネットニュースを見ていても中国のHR Techサービスを目にすることは2020年時点では滅多にありません。

中国はあまりHR Techに興味がないのかというと、膨大な生産人口を抱えている市場として、無関心であるはずもありません。
当然、中国国内で独自のHR Techイベントなども積極的に行われています。

では一体、中国のHRtechはどうなっているのか?
中国のHR Techの状況をご紹介する前に、中国の労働市場の特徴をまず見てみましょう。

膨大な労働人口と活発な転職市場

中国では、2011年から2020年までに卓越したエンジニア育成計画を推進されて、その計画が功を奏しており、現在エンジニア人材を潤沢に抱えていると言われています。

テクノロジーの進歩が著しいはずの中国が、HRTech市場で姿を見せない理由は、その市場の特性にあります。

前述の通り、7.8億人という膨大な労働人口を抱えている世界の工場の中国は、その半数以上が建設や製造、そして物流などのブルーカラーの職種に従事しています。

そして人数以外のもう一つの市場特性として、中国の転職に対する意識にあります。日本では「転職回数」が採用時に評価基準の一つになる傾向がありますが、、中国では重要視されてないことが多いです。

企業も、働く人々も、日本のような終身雇用の考え方は一切持っていません。
中国の労働者は、より良い環境、より高い給与を出す職場があれば、積極的に転職するのが一つの特性として挙げられます。

転職に対する心理的ハードルの低さを表す逸話で有名なのは、
中国の工場の従業員は旧正月などの長期休暇で里帰りして、同郷の知り合いが勤めている別の職場に誘われ、条件がよかったのでそのまま帰ってくることなく転職する、という話があります。

実際中国の工場で勤めている若者の年間平均転職回数0.63回、三年以上同じ職場で働く人は全体のわずか2.4%という統計もあり、転職市場の凄まじさがうかがえます。

つまるところ中国のHR Techにおいてまず重要な課題が、7.8億人の労働者、しかもかなり流動的な人材に関する膨大なデータを的確に、正確に管理し、人材の補充及び配分を行うかとなっています。

HCMやHRMが最重要課題

労働人口及び転職市場の活発さをご理解いただいた前提で、中国のHRtechクラウドマップをご覧いただきましょう。

出典:HR Tech China

マップ上で表示されているカテゴリはいろいろありますが、主にリクルーティング、HRMとHCMのサービスが多くなっています。

採用と管理に集中していると言う印象が強く、そこが中国企業の重要課題として認識しても差し支えないでしょう。

HCMやHRMに関しては、HR関連の業務を一元化するものはもちろん、給与の支払いに関しても、中国独特なテクノロジーと文化の下、工夫をしています。いくつか例を見てみましょう。

例1:電子マネーで給与の日払い

給与の支払い方法のソリューションを提供しているAnxin eHR(安心云人事)というシステムは、中国国内ならではの銀行のカード回収による給与振込を、中国国民が18歳を超えると必ず所持する身分証だけで、振り込みを可能にするシステムに変換したりしています。

また、同サービスは「日払い可能」案件にもメスを入れました。
「日払い可能」案件は日本の市場でも採用に有利に働いたり、短期案件で人気を集めることができる条件の一つですが、当日中に給与を支払うのは事務処理がとても大変であることは想像に難くありません。

そして、中国のマンモス工場では、その様な処理を当日中に行うことが事実上不可能でした。それをAlipayと提携し電子マネーによる支払いで、当日分の給与振り込み実現したりなど、電子マネーが定着している市場に合わせた、独自の進化を遂げているところが中国市場の面白いところです。

Anxin eHRの日払いについて

例2:溢れるリファラル採用

もう一つ例を見てみましょう。同じく近頃日本でも取り沙汰されることが多いリファラル採用もまた、中国ならではの進化を遂げています。

日本のリファラル採用は人手不足による採用難を受け、改めてそのあり方を見直されているいわゆる「社員による紹介での採用」ですが、その背景だからこそ「どうしたら社員に紹介してもらえるか」にフォーカスしています。

一方中国のリファラル採用は「長期休暇で同郷が知り合いを連れてくる」という日本ではあまり想像つかない変わったリファラルがあり、活発な転職市場であることも思い出していただくと、提供されるサービスが全く違う物であることが一目瞭然です。

中国のリファラル採用は「如何に効率よく多く紹介を的確に捌けるか」というところにフォーカスしています。そのプラットフォームの一つで「六度推(リュードゥートゥイ」というサービスがあります。

内容としてはリファラル採用のプラットフォームから、社内でのリファラル採用の運用、そして紹介されたあとにAIからのレコメンド、の三つを一体化としたサービスです。

リファラル採用に特化しているため、工場などで大人数のリファラル採用をしっかり運用したい場合は、紹介した社員へのリワードなど、煩雑な管理が一元化され、
紹介された方はAIによって一度フィルタリングされるので、人事の仕事がとても楽になる仕組みです。

まとめ

以前「世界のHR Techの進化史」でご紹介した通り、人事の業務をテクノロジーで一元管理したり、ツールをまとめたりする期間は、オートメーション期とインテグレーション期と位置付けられています。米国を中心とした世界のHRTechにおいては、2000年代までのトレンドとなっています。

その進化史で見ると中国は遅れているとも受け止められますが、、決してそうではありません。

活発な転職市場に対して、より高い従業員満足度を追求するエンゲージメントツールに対するニーズはすでに注目されつつありますし、そもそも中国のHRTechはガラパゴスの様にその独自のニーズに合わせながら最先端を走っている状況です。

それらのサービスが世界進出し、世界のニーズに対して今まで育て上げた優秀な人材たちが超高速でピボットさせ、世界を牛耳る未来が思いの外早くやってくることでしょう。

「眠れる獅子」がいつ世界に目を向けるのか、これからも注目していきたいところです。

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