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HR・テクノロジー動向

HRTechが必要とされるのはなぜか

「働き方改革」の推進に伴い業務の改善・効率化に取り組む企業が増えてきました。ビッグデータやAIの活用が盛んになる中で、近年「HRTech」が注目を集めています。

HRTechとは”Human Resource”と”Technology”を組み合わせた造語です。求人や採用フェーズで用いられるものから、入社後の労務管理やエンゲージメント向上を目的としたものまで、その種類は多岐に渡ります。

慶應義塾大学大学院 特任教授の岩本さんの著書「HRテクノロジー入門」を読み、なぜ「HRTech」が必要とされるようになったのか、その背景と課題についてまとめます。

●紹介文
岩本隆 氏
東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。

人材マネジメントの重要性が高まる

日本の歴史を振り返ると、第二次世界大戦以降、日本の経済を支えてきたのは製造業でした。製造業は、製造に関わる全員が均一のクオリティのものを同じ方法で作ることが重視されていました。しかし1990年以降、世界における日本のシェアは徐々に減少し、今や日本のGDPの75%はサービス業が担っています。

そして、日本のサービス業は生産性が低いことが問題視されています。日本のサービス業は、「良いものをより安く」と言われるように、サービスに対してかかっているコストを無視して安く提供する過剰なサービスがなされがちです。サービスが対価に転嫁されていないことが原因の一つです。

サービス業は従業員が生み出す価値が人によって異なるため、従業員一人当たりが生み出す価値を高める必要があります。岩本氏のインタビュー記事では、例として次のことが挙げられています。

例えば、プロスポーツの世界がわかりやすいでしょう。年間で数億円稼ぐ人もいれば、数百万円しか稼げない人もいます。高い価値を出せる人には、より高い価値を出してもらえるように。まだ生み出す価値が低い人は、改善できるように。柔軟性のある人事施策が非常に重要です。

出典:これからの人事には『HRテクノロジー』が必要だ

従業員の生産性を高めるにテクノロジーを活用し、業務を効率化するととともに、人材の採用・育成といった「人材マネジメント」が重要になってきました。

日本におけるHRTechの活用

HRTechの活用はまさにこの人材マネジメントをより的確に行うための手段の一つです。業務の自動化によって社員の生産性を高めるだけでなく、人事評価システムのような目標設定・管理を行うサービスを活用することで、組織の生産性を高めることができます。

例えば、人事評価や人事情報、勤怠データを基に従業員の働き方を分析します。ハイパフォーマーの傾向や離職傾向にある社員の発見に役立ちます。

従業員に関する日々のデータが容易に蓄積・確認できることで、年に数回程度しか行われていなかった評価面談のようなフィードバックが高頻度で手軽に実施できるようになりました。

また、良い企業文化をつくるためには、従業員の企業への信頼、貢献しようとする意欲を意味する「エンゲージメント」を高めることが重要とされています。

従業員エンゲージメントの度合い(=企業と従業員の関係性が良好かどうか)を測るためには従業員アンケートを実施し、その結果を分析することが一般的です。

サーベイ系のHRTechを活用することで、今まで集計から分析までアナログに行われていたことがより手軽に取り組めるようになりました。短いサイクルで組織・個人の働き方について把握し、改善できるようになりました。

HRTech活用の上で大切なこと

本書を通して、HRTechを用いることで人材マネジメントにおいて必要なデータの蓄積や分析が容易になることがわかりました。採用の候補者情報を管理するツールや組織状態を把握するためのサーベイツール、労務管理ツールなど様々なものがあります。

しかし、HRTechを導入すれば良い人材マネジメントが自動で行われる、ということではありません。

HRTechなどのツールは企業を支えるプラットフォームであり、その上には企業文化、組織、そして従業員がいます。企業活動は突き詰めると「人と人」、「組織と人の関わり合い」なので、テクノロジーではできないこと、そして人間だからこそできることがあります。

HRTechを活用する際は、「なぜそのツールを導入するのか」、「そのツールから得られる効用はどのようにすればより高めていけるのか」考えることが大切そうです。

BELLWETHER

Bellwetherは、現場をなんとかしたいと思っているリーダーに向けて発信する、マネジメントメディアです。株式会社KAKEAIが運営しています。これから管理職に就こうとしているリーダーに、マネジメントとは何かを感じ取るための、様々な考え方や理論、組織を牽引するリーダーの考え方を幅広く紹介します。多様性を楽しみ、解なき複雑な時代に挑むリーダーを応援します。

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