大企業の未来を創る変革リーダーの挑戦①(前編)
大企業か、スタートアップか。
就職活動にも大きな変化が起こり始め、若手の大企業離れなど、大企業に対する視線や取り巻く環境も変わってきています。
それでも、大企業だからこその可能性があり、大企業の未来を創るために現場で奮闘している変革リーダーが多くいます。
現場の若手リーダーやマネジャーに向けて、大企業の変革リーダーの葛藤、チャレンジ、想いをお届けします。
今回は日本を代表する大企業であるNTT東日本の太田さんにお話を伺いました。
太田さんが課長になった時にどのような壁にぶつかり、乗り越えるためにどのようなアクションをとり、結果として自分自身のマネジメントや組織変革へと繋げていったか。
具体的なエピソードを交えて、同じように悩み、奮闘する皆様へ勇気と具体的なヒントをお届けできれば幸いです。
<プロフィール>
2004年、東日本電信電話株式会社に入社。入社後2年間不動産ディベロッパー、マンションオーナー向けのフレッツ光に関する装置の営業に従事したのち、フレッツ光事業のマーケティング、フレッツ光の卸事業への転換に携わる。
その後、課長に昇格し、東京エリアのフレッツ光の卸モデルを拡大させる販売企画と同時に、新規事業の創出や自組織の組織変革を中心となって推進。現在は、オウンドメディアの高度化など、デジタルマーケティングに取り組んでいる。
「あらゆる人からの期待を超える」ために
本日はよろしくお願い致します。まず始めに太田さんのこれまでのご経歴について簡単にお伺いさせてください。
「現在はビジネス開発本部にてデジタルマーケティングに携わっています。新卒で入社後2年ほどフレッツ光に関連する装置の営業をした後、NTTが提供しているサービスのマーケティング主管としてフレッツ光を担当」
「その後、フレッツ光の卸事業への転換を経て、販売企画課長として東京エリアでの卸モデルの拡大に従事してきました。また販売企画課長時代には、新規事業の提案や職場の組織開発にも携わっていました」
ーー仕事をする中で、太田さんが大事にしてきたこと、していることは何ですか。
「あらゆる人からの期待を超える」ことです。仕事でも、些細な日常のコミュニケーションでも、入社3年目ぐらいからこれだけを意識してきました」
「期待を超えるバーをどこに設定するかはありますが、例えば、販売系のマーケティングに携わっていた係長時代には、「100売ろうね」というのは最低限の期待で、むしろそれを当たり前にやった上で、さらに何をするかを考えていました」
「例えば、自分だけでなく周りの係長も巻き込み、どうやったら営業マンが前向きに営業できる組織になるかを定期的にディスカッションをしてきました」
「初めての壁」にぶつかったマネジメント体験
ーー順調に成果を出す中で、課長になってどのような変化がありましたか。
「自分としてはマネジャーの役割は性に合っていると思っていますが、やはりプレーヤーの時とは違う素養が求められるなと痛感させられました。ある意味自分でやるのは簡単でしたが、周囲のメンバーに同じ方向を向いてもらって、チームとして期待を超える成果を出すことは難しかったです」
「最初はチームメンバー9人でしたが、一人ひとり想いも違うし、想いをそこまで持っていない人もいる。それを引き出しながら支援するように関わっていましたが、ある時、課長が1人辞めて14人のチームメンバーを見ることになり、完全にアップアップになりました」
「自分より年上である50代後半のチームメンバーがいたり、メンバー一人ひとり異なる中で、一人ひとり細かくマネジメントしているだけではうまくいかない。14人全体として求められていることに対しては全然届かないですし、実際半分ぐらいは置き去りにしていたと思います」
「スケジュールだけは忙しいのに、やってもやっても期待値に届かない。自分のスケジュールが埋まりすぎていて、チームメンバーからは話かけるのが申し訳ないと思われていたのではないかと思います。結果として成果も出なければ、一人ひとりにも向き合えない。自分自身の力の無さに、ただただ悲しい気持ちになりました」
「社外に目を向ける」ことで見えた今できること
ーーそんな状況の中で、どのように活路を見出し、その壁を乗り越えていったのでしょうか。
「一番大きなきっかけは「社外に目を向ける」ことだったと思います」
「マネジメントがなかなかうまくいかない中で、社内ですごいと言われている人に話を聞いたり、リーダーシップについて学んだりしてみましたが、社外の人からの学びが一番大きかったです」
「新規事業に携わっていたので社外の人と会う機会は人より多かったと思いますが、年100人ペースで会う機会を自分で意識して作りました」
「その中で1番記憶に残っているのが、ビジョンを持って楽しそうに取り組んでいるスタートアップの皆さんの姿でした。
「大企業の人は楽しそうにしていないなと感じていましたし、どうしても歯車になりがちです。その中でもまずは自分自身が楽しく仕事をすること、少なくとも自分のチームを鼓舞できるようになろうというのが、一番強く感じたことでした」
「同時に、自分もまだまだできると勇気をもらえたことも大きかったです。自分より若い人も多かったですし、スタートアップの皆さんが自信を持ってやっている姿や世の中に価値を提供している姿を見ると、自分もまだまだできるという気持ちになりました」
「仕事に魂をのせるじゃないですけど、できることをやっていないのはもったいないなと。今の立場でできることも本当に貴重なことだし、大企業だからこそできることってあると思えるようになりました。
「大企業は確かに動かしづらいですけど、ポテンシャルはあると思います。NTT東日本の土台は通信ですし、通信は何にでも融合できる。日本の国際競争力を動かせるポテンシャルを秘めている。だからやれるとこまでやろうと。今は真顔でそう思っています。」
「やりたい」を引き出すマネジメント対話
ーー社外から刺激を受けたことで、太田さんのマネジメントはどんな風に変わりましたか?
「やはりチームメンバーの力を引き出すには、ビジョンとか、『やりたい』って思ってもらえないとダメだと強く感じるようになりました。そうでないとマネジメントの限界が近いなと」
「そこでチームのメンバーと、どんな価値観でやってきたか、自分がやってきた中で誇れる仕事は何かについて話をしました。一人30分と決めていたのですが、話始めるとみんな90分ぐらい話をしてくれます」
「本当にやってよかったと思いますし、その時のノートは今でも残っています。ベテラン社員にとって昔の成功体験は誇りなんだと思いますし、プライベートまで踏み込んでいきながら、どういう仕事をしたいのかを一緒に考えるようにしました」
「そして、できるだけ本人の志向に近い仕事を渡せるようにしましたし、進んでいる方向性さえ間違ってなければ、任せられるようになりました。すると自分にも時間ができますし、結果として良い循環が回るようになりました。仕事と切り離して時間を設けたのが大きかったと思います」
「また、だんだんと与える側になっているという自覚を持てたことも大きな変化でした。課長になると、その日からチームメンバーにとってはその人がマネジャーなんだと思います。なりたての頃はピシッと切り替えるのは難しいが、与える側なんだと思わないと失礼だなと」
「もちろん、いろいろなリーダーシップがあるが、僕としたはそれが一番かなと思っていますし、チームにどれだけ気づきを与えられるかを大事にしています」
ありがとうございます。
リーダーシップやマネジメントのスタイルは様々あると思いますし、これから先また変化するものなのかもしれませんが、太田さんの中で壁を乗り越えながら、自分なりのスタイルを確立していったのですね。
ここからは、太田さんが自身のチームだけでなく、職場全体で取り組んできた「変化に強い組織づくり」についてもぜひお話をお伺いさせてください。
(次回に続く)