
サッカー留学で学んだ多様性 成功体験で結束する
AnyMind Group株式会社でシニアマネジャーを務める美濃又さん。学生時代のドイツへのサッカー留学において、「試合に勝つことで年齢も背景も人生の目的も違うメンバーと結束できた」と話します。
全員が感情を爆発させて喜んだあの勝利。仕事でも味わいたい。メンバー全員が自分のベストを出し切れるよう「お互いに尊重し合い、歩み寄ることが大事」だと強調します。本連載では、様々な業界のリーダーに「マネジメントで大切にしていること」をたずねます。
●紹介文
美濃又 慧至(みのまた けいし)1985年生まれ。
2010年株式会社光通信入社、営業の下地を積む。2013年株式会社フリークアウトに参画。その後、外資系SaaSプラットフォーム企業や大手総合広告代理店を経験し、2018年にフリークアウトにてクロスボーダーマーケティング事業の立ち上げを行う。2020年よりAnyMind Group株式会社シニアマネジャーとしてマーケティングテック領域事業のさらなる成長を担う。
多様性を受け入れ、歩み寄る
——マネジメントで心掛けていることはありますか。
「多様性を受け入れながら、歩み寄ることが大切だと考えています。それぞれバックボーンやライフスタイルは異なります。メンバーのキャリアパスを考えるときは、仕事の話だけでなく、メンバー自身のライフプランについても耳を傾けるようにしています」
——プライベートを聞くのはどうしてですか。
「何のために仕事をしていて、この組織でどのような実績を出して、将来はどんな風になりたいのか。会社のケイパビリティの中で、イメージを持って仕事に取り組んでもらうことが大事だと考えています」
「そのために、メンバーになりたい将来像を思い描いてもらった上で、芯を持ってもらう。僕からは、客観的な視点でメンバーの目標からずれていないかを伝え、他の可能性も提示する。判断材料を一つでも多く提供したいですね」
「僕も自分の人生の中でたくさんの人に出会い、選択肢の幅広さを知りました。メンバーのヒントになるよう、還元していきたいです」
成功体験が一体感を生み出す
サッカー留学時の体験について聞きました
——今のマネジメントスタイルになったのにはきっかけがありましたか。
「大きなきっかけがありました。僕は学生時代、ドイツにサッカー留学していました。ある時、誰がみても大切なリーグ戦の試合がありました。勝てば順位が上がるし、負ければさらに下がる。けれど、試合前日の練習は早々に終わってしまいました」
「日本であれば、大事な試合の前には必ずミーティングをします。精神論的ではあるけど、チームの気持ちを一つにするためです。監督に全員でミーティングをしないのかと聞いたら『なぜチームで一つになる必要があるのか』と言われました。驚きましたね」
「監督は続けて『この場にいるみんなはそれぞれ目的が異なる』と言いました。トルコからの移民である彼は、サッカーで食べていかなければいけない。40歳を超えている彼は、残りの限られたサッカー人生で一試合でも多くサッカーをやる。『年齢も国籍もバックボーンもこれから目指していくところも違うメンバーが一つになれるわけないだろう』と」
「監督は最後に、『けれど結果として得るものは全員平等』、明日勝てば次のステップに行けるし、負ければこのメンバーは解散になる可能性もあると言いました。『話している時間は無駄だから、明日の自分の仕事に専念しろ』と。その時はドライだなと感じましたね」
監督の発言に思わず苦笑する美濃又さん
「でも次の日の試合は勝ちました。全員が感情を爆発させて喜ぶ瞬間です。成功体験を共にすることで強い結束が生まれる。自分の仕事を全うするだけではあるものの、『勝つ』という目的は同じ。一体感を出すためのミーティングがなくとも、強いチームは作れると知りました」
——まさに多様性を受け入れたチームづくりですね。仕事に生かすためにはどのような観点が必要でしょうか。
「キャリアパスの観点で考えると、中長期的なキャリアプランも含めた、将来的なイメージのすり合わせが必要になります。個人としての目標の中で、会社のメンバー個人としても成果を出す。その目標に向かって必要なコミュニケーションとは何か」
「『多様性を受け入れる』とは、相手を尊重するということです。僕の強みは、誰とでもフランクに話せること。率先してメンバーに働きかけるようにしています。サッカーで味わったあの感覚が忘れられない。仕事でも同じように感情を爆発させるような経験をメンバーとしたいです」
仲間を想い 恐れずに決断を
エモさとは「感情を揺さぶられる」こと
——最後にこれからマネジャーになる人に向けてエールをお願いします。
「組織の規模に関わらず、マネジャーは会社の大きな流れの中で決断する機会が多いと思います。メンバーに相談して一緒に決められることもあるけど、組織としての決断を自分がしなければいけないタイミングもある。その決断はとても孤独さを感じます」
「僕はもともとエモい人間。ビジネスジャッジメントをする上で、エモーショナルさが足かせになる可能性もあって、意識的にドライに判断してきました」
「今のマネジメントスタイルで良いのか悩むこともあるけど、コンプレックスに向き合う中で、自分の強みはフランクさだと気付きました」
「リーダーには、孤独さや責任が伴うけど、恐れずに決断して欲しいと思います。でも最後は『人と人との関わり』。相手を尊重し、歩み寄ってください。僕も頑張ります!」
留学時のサインを添えてもらいました