1. HOME
  2. マネジメントを変える
  3. うつ傾向のある部下も元気を取り戻す 上司の接し方
マネジメントを変える

うつ傾向のある部下も元気を取り戻す 上司の接し方

前編では、ブレークスルーパートナーズの赤羽雄二さんにマネジャーになる前に意識することをお伺いしました。なってはいけないダメ上司の特徴7タイプと、部下との信頼関係を築くためのポイントについてもご紹介しました。

後編では、「部下に向く仕事とは何か」、仕事を指示する際のポイントについて聞きます。もう一歩踏み込み、マネジャーから挙げられる現場での悩みである「やる気のない部下・腐っている部下」への接し方についても赤羽さんにお答えいただきました。

●紹介文
赤羽雄二(ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクター)
東大工学部卒業後、コマツにてダンプトラックの開発に携わる。スタンフォード大学大学院に留学後、マッキンゼー入社。ソウルオフィスをゼロから立ち上げるなど、14年間活躍。その後、ブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業し、ベンチャー経営支援、大企業の経営改革、幹部育成、新事業創出に取り組む。韓国、シンガポール、インド、ベトナムなどの企業を支援。 著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『変化できる人』など国内21冊、海外21冊。合計95万部超。
内外での講演多数。東京大学、早稲田大学、電気通信大学、北陸先端科学技術大学院大学講師。
▸著書一覧 ▸講演一覧  オンラインサロン

部下に向く仕事とは何か

——部下のやる気を引き出すために、部下の興味にあった仕事をまかせたいと考える上司は多いようです。しかし、自部門のミッションとの兼ね合いもあるため、部下の要望を全てかなえることはむずかしいですよね。この場合、部下のモチベーションを下げずに、必要な仕事をまかせるにはどうすればいいのでしょうか。

「部下がやりたいと思っている仕事が、本当に向いているかどうかはわかりません。興味のない仕事でも、仕事を続けているうちに生涯の仕事になることはあります。部署のミッションを踏まえると、部下の希望を100%かなえることはできませんし、かなえることがいいとも限りません」

「ある程度は部下の希望を尊重しながらも、部署としての最適化を図るところが上司としての腕の見せどころです。上司への信頼があれば、部下はそこまで乗り気でなくても引き受け、前向きに取り組んでくれます。その中で成功体験ができれば、部下は成長します。部下の話をきちんと聞き、部署のニーズもよく説明することで、部下自身が『人として尊重されている』と感じてくれれば、よいのではないでしょうか」

部下に仕事を指示する際のコツ

——部下に指示した仕事のアウトプットが期待にそぐわない場合、どうすればよろしいでしょうか。いろいろ指示しても思うようなアウトプットが出てこない、と悩む上司は多いようです。

「部下に口頭で指示する上司が多いのですが、それはダメです。必ず、1ページの簡潔なタスクシートに書いて指示します。口頭だと記憶があいまいになり、上司も部下も自分の都合のいいようにしか覚えていません。タスクシートとは、タスクごとに『何を』『いつまでに』『どのようなリソースを使って』『どういうアプローチで進めるか』を1ページに書いたものです。その際に、アウトプットのイメージを作成するとさらにうまく回ります」

アウトプットイメージ作成

「部下に書類・資料作成を指示するときは、完了時のアウトプットイメージを実際のページ数で用意し、部下に説明することをお勧めしています。文字通り、『アウトプットイメージ作成アプローチ』と呼んでいます。部下に説明して合意したあとは、仕上げる期日まで頻繁に進捗状況を確認します。できていないところは書き方や分析のしかた、メッセージなど、上司が見本を示します。部下がサボっているわけではないからです」

【企画書作成の例】

・上司自信が表紙、目次、各ページ(メッセージと、下に何を書くか)を30分程度でざっと書く

・ページを振って、極力完成形に近いイメージにする(章構成、ページ数、ページごとのメッセージ等)

・コピーを部下に渡して最初から最後まで説明し、すり合わせる

・質問にも全部答えて、必要に応じて修正する

・部下はこれをガイドラインとして仕事を進めつつ、頻繁に上司からインプットを得る

・上司とのミーティング頻度は、締切まで2週間であれば、7~10回程度となる

・方向性が明確で、上司とも完全にすり合わせができているので、必要以上に迷うことなく素早く企画書作成が進む

赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p107)

「書類作成だけでなく、日常の小さなタスクも紙に書いて渡すことをお勧めします。部下が指示を守らない、忘れると文句を言う上司は多いですが、実際は上司があいまいな指示しかせず、フォローも甘いのが普通です。言いっぱなしにせず、書いたアクションリストを目の前に貼ってもらっておけば、部下が忘れることはそんなにあるものではありません」

腐っている部下への接し方

——やる気のない部下や、前の上司と合わずにトラウマを抱えている部下には、どのようなことに気をつけて接すればよろしいでしょうか。

「何かの原因で腐っている部下には、アクティブリスニングを徹底し、まず人として認めてあげることが大事ですし、出発点として必要です。その後、その部下ができる仕事を分解し、小さな成功体験を積み重ねてもらうことで、腐っていた部下もやる気を出し始めます。そうするとだんだん歯車が噛み合い、元気が出て、成長が加速します。あるていど面倒を見るのは、上司の重要な役割です」

「ひどいパワハラにさらされていた部下はひどく傷ついています。まずは話をゆっくりと聞き、上司である自分への信頼を得る努力が必要です。ただし、仕事が忙しい中で1人の部下に過剰に時間を使うわけにはいきません。目安は1時間の面談3~4回です。徹底して話を聞いても部下の精神状況が全く改善せず、厳しい職場で働くことは本人のためにもならないと判断した場合、人事部・総務部に話して人事異動するしかないかも知れません」

「同じハラスメントを受けても、愛着障害のある人とそうでない人とでは、本人の受け止め方が異なります。日本人の3人に1人は愛着障害があると言われていますが、愛着障害がある人は、自分が悪いと思ってしまうので本格的なうつになりやすい傾向があります。生真面目で自分を責めるタイプですね。自己肯定感の高いタイプであれば、自分は何も悪くない、この上司が悪いと健全に言うことができます」

「話を丁寧に聞くことで上司への信頼感が高まると、今までに話さなかったことも話してくれるようになります。何がボトルネックだったのか把握し、相手の立場で考えれば、痛みが理解できます。痛みに共感できれば部下への接し方も柔軟になります。自分の接し方が変わると、それが相手に伝わり、部下自身も疑念が減り、よい方向に変わっていきます。少しずつ好循環が生まれます。トラウマのある部下に少しでも元気になってもらうには、「トラウマを消してお釣りがくるほど人間的な扱い」を受けていただく必要があります」

「アクティブリスニングについては新刊の『自己満足ではない「徹底的に聞く」技術』に詳しく書きましたので、できれば読んで実践していただければと思います。

「また、これに限らず、上司としての仕事のしかた、上司になるまでの準備、アクティブリスニングのしかたなど、直接質問してみたい、という方は遠慮なく<akaba@b-t-partners.com>のほうにお送りください。すぐにお返事します」

BELLWETHER

Bellwetherは、現場をなんとかしたいと思っているリーダーに向けて発信する、マネジメントメディアです。株式会社KAKEAIが運営しています。これから管理職に就こうとしているリーダーに、マネジメントとは何かを感じ取るための、様々な考え方や理論、組織を牽引するリーダーの考え方を幅広く紹介します。多様性を楽しみ、解なき複雑な時代に挑むリーダーを応援します。

アクセスランキング

運営会社