エンパワーメントとは
組織を運営していく中では、トップダウンで方向性や戦略を浸透・徹底させていく動きと
ボトムアップでメンバーの自発的な言動を起点にした動きの双方が必要になります。
「主体的に動く」「自分で考えながら動く」といった組織風土を生み出すためのエンパワーメントについて考えてみましょう。
エンパワーメントとは
“empowerment“という言葉には、「権限付与」「権限移譲」「自信をつけて力をつけさえること」という意味があります。
『被抑圧者の教育学』の著者ブラジルの教育思想家パウロ・フレイレが提唱した概念の1つで社会学的な観点で広く使われるようになりました。
社会問題では「抑圧的な状態に置かれている個人がその構造や要因を把握し、状況を変えていくための精神的な力、方法論を獲得できるように支援する」という意味合いになります。
その後、社会問題だけではなく企業活動においても用いられるようになっていきました。
組織がパフォーマンスを最大化するために、従業員に責任の全うに必要な権限を与え、責任を果たしていくために自主的・主体的に行動できるような支援全般を意味します。
単なる権限移譲という意味だけではなく、従業員が生き生きとしながら自分が持ちうる力を最大限に発揮するということも含まれています。
エンパワーメントが必要な理由
組織として一つの方向性に向かって動いていく上では、組織の上層部で戦略や戦術を決定し徹底して、全員で取り組んでいくというやり方もあります。しかし、一定以上の規模の組織では上層部からの情報を全員に周知徹底するのに時間がかかる上に、何かしらの判断を上層部に求めていてはスピーディな意思決定ができずに対応が遅くなることがあります。
また、社会・経済環境の変化が激しい時や個別の対応が必要になる市場では必ずしも全体として決定された戦術が機能するとは限りません。
そこで、各現場のメンバーが自主的・主体的に行動しながら自ら考えて判断することで機会を逸することなく組織活動を運営することが必要になってきます。
このような理由から一定のエンパワーメントを進める企業・組織が増えてきています。
マネージャーができること
企業内で行われる活動は、組織として目指す方向性にそっていなければなりません。
エンパワーメントの前提としてまずは、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」を明確にすることが必要です。
自分の組織のミッション(使命、目的)やビジョン(ミッションを実現したどのような姿を目指すのか)、バリュー(価値基準、行動指針)を前提にすることで、今の自分の役割で何にどのように取り組むべきかを組織に所属する個々人が考えられるようになります。
また、何をすべきで何をすべきでないかといった戦略を共有しておくことも重要です。
実際にマネージャーが管掌する組織のメンバーに具体的に業務をアサインする時には、どの範囲の仕事に取り組んでもらうのか、また何をメンバー自身が判断してよく、どのような状況では相談・報告が欲しいのかということを予めイメージしておくとよいでしょう。
メンバー自身にも期待と合わせてその内容を伝えることで、仕事を任せてエンパワーできるようになります。