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マネジメントを変える

部下の成長が嬉しい 一緒に働く人を笑顔に

トラックの運転手をしていた大須賀さんは、中途採用で串カツ田中ホールディングスに入社しました。現場からの叩き上げで、わずか4年で取締役営業本部長になりました。一般社員として現場から経験を下積み、店長、スーパーバイザーとキャリアップしました。今年から新会社の代表を務めます。

本当はコミュニケーションが苦手と話す大須賀さん。一方で、部下の成果は嬉しく、マネジャーはやりがいのある仕事と微笑みます。「一緒に働く人を大切に。笑顔を一人でも多く増やすことが大切」と強調します。

本連載では、様々な業界のリーダーに「マネジメントで大切にしていること」をたずねます。

●紹介文
大須賀 伸博さん、1990年生まれ。
2011年に串カツ田中ホールディングスに中途入社し、一般社員として働き始める。一年以内に店舗責任者を担当し、フランチャイズの研修生受け入れを担う。2013年にはフランチャイズのスーパーバイザーに携わり、2015年取締役営業本部長に着任。2019年には取締役新規事業担当に就任し、2020年より串カツ田中に次ぐ第2のブランドを創る目的で設立された新会社株式会社セカンドアローの代表者も務める。

厨房・接客からスタートした新人時代

——現場からの叩き上げでたった4年で取締役営業本部長まで上り詰めたのですね。入社当時はどのようなことをされていましたか?

「串カツ田中には中途入社でした。飲食店に関心があったこともあり、家の近くで繁盛している串カツ田中に行きました。とても美味しくて。そこで働く人や、ブランド作りに興味を持ちました。一般社員として働き始めたので、接客や調理の基礎から学びました」

「入社一年ほどで店舗責任者になり、シフトや売り上げの数値管理をしていました。数値の開示をしていない飲食店は多いのですが、弊社は社長の方針もあり、十日に一度は棚卸しをします。損益計算書を見ながら無駄を省いたり、見直したり。数値に基づく判断や、改善を早く回すことについては、その頃に身につきました」

初めてのマネジメント

——店長業務が初めてのマネジメント経験だったのですね。印象に残るエピソードはありますか。

「当時は若かったこともあり、仕事ができる人を勝手に決めてシフトを組んでいました。今なら、教え方に問題があると分かるのですが。できない子は個の能力がないからだと決めつけていましたね。そうすると、シフトに入れない子からは文句が出ますし、つまづいてしまうと周りからも『できない子』としてレッテルを貼られてしまいます。ただ、そういう子は、笑顔や接客が得意だったりもして。得意な部分を輝かせるために、弱点を減らせればと思いました」

誰でもできるフラットな仕組みづくり

——どのように改善を図ったのでしょうか。

「人によって『できる・できない』、『作業が早い・遅い』が出てしまわないように、誰でもできる仕組みを作ろうと考えました。いわゆる、業務の見える化です」

「ルーティン表を作成し、スタッフの各ポジションで、どの作業をどの手順でやるかを整理しました。作業が一つ終わると、チェックをつけてもらう。飲食店の仕事はどの作業も簡単ですが、覚える量が多いです。作業の順番を覚えることに頭を使うなら、人でないとできない仕事にパワーを割いた方が良い」

「マネジャーも表を見れば、何がどこまで終わっているか一目で分かります。その分、お互いのコミュニケーションに時間が使えます」

——とても効率的ですね。でも、中には面倒がってルーティン表を使わないスタッフはいませんでしたか。

「いましたね。でも多分、使わない原因は効果が見えないからだと思います。ルーティン表を使う子と、使っていない子とでは作業の終了時間に違いがでます。効果を見せれば、相手は納得してくれます」

「一つ一つの作業に意味を持たせることも大切です。例えば、ソースはなぜバットで出すのか。『それは大阪文化を体験してもらうコンセプトだからだよ』とかですね。長く働いていれば、要領も身につきますが、ベテランのやり方を新人に押し付けるのは無理があります。なので基本的に誰でもできるフラットな仕組みを構築することが重要だと思っています」

お客様を笑顔にするために従業員満足度をあげる

——仕組み作りは重要ですね。メンバーに接する際に大切にされていることはありますか。

「相手のメリットになることは何だろうと考えるようにしています。相手がされて嬉しいことです。接客の基本と紐づくと思います。楽しく働ける環境を作るとか、働く者同士がやりがいを持てるとか。結局は対人なので。難しく考えず、その人が輝けることって何だろうと考えることが一番大切だと思っています」

「串カツ田中では『一人でも多くの笑顔をつくることで、社会貢献する』という企業理念があります。『一人でも』というのは、一般的にはお客様を指すと思うんですけど、お客様を笑顔にするためには、働く自分たちが笑顔でないといけません。そのために、従業員満足度を高める。従業員の笑顔を増やせる店長は優秀だよねといった共通認識があります」

——木場店のスタッフの明るさが印象的でした。いつ行っても、笑顔で接客してくれます。何か工夫されていることはありますか。

「木場店はFC店舗なのですが、店舗独自のユニークな方針を打ち出しています。串カツ田中の企業理念を基本としたうえで、それとは別に店長が『店舗理念』を決めています。弊社では、優秀な店舗を表彰する社内フォーラムを開いています」

「木場店の店長はそこへの入賞を目標にしていて、『自分たちの成果を目に見える形で出そう』とメンバーに話しているそうです。それに加え、アルバイトの子たちの人生に寄り添った長期的なビジョンも掲げています」

「串カツ田中でのアルバイトは、彼ら彼女らにとって就職するまでの過程に過ぎないと思うんですね。だからこそ、ここでの学びを生かして、社会で活躍できるような人材になって欲しいと伝えているようです」

「直営店舗でもFC店舗でも同様ですが、会社や部門への帰属感も細分化していくと、結局は身の回りの人への信頼感だと思うんです。木場店が明るいのは、優秀な上司がいて、店長自身がメンバーに働く意義を伝えられているからだと思います」

感謝と納得感が信頼に繋がる

——信頼を高めるために気をつけることはありますか。

「相手に感謝することと、納得感を持ってもらうことだと思います。感情で相手を押しつぶすと不満に変わります。納得せずに終わるようなコミュニケーションはしないようにしています。普段の業務の中で、負荷がかかりすぎているように感じれば、自分も中に入って手伝います」

「9月にオープンする新店はちょうど今対応に追われていて。昨日も現場を見に行ったら、卵をたくさん茹でていて、全然追いついていないんですね。だから隣で一緒に茹で卵を剥いたりとか。社長がやる仕事ではなくても、サポートして相手の不安をできるだけ払拭してあげる。そういったことが信頼に繋がっていくのだと思います」

——最後にこれからマネジャーになる人に向けてエールをお願いします。

「いくつもの部門を経験し、幅広く業務を経験してきましたが、マネジャーの仕事は本当に楽しいと思います。成果にしろ失敗にせよ、チームとして共感できるので。そして、自分の成果よりも、部下の成果の方が喜びになる瞬間ってくるんですよね。失敗があったとしても、どうすればよくなるのかっていうポジティブな発想に変えていく。部下が泣いて喜んでいる姿を見ると、とても誇らしく、嬉しく思います」

BELLWETHER

Bellwetherは、現場をなんとかしたいと思っているリーダーに向けて発信する、マネジメントメディアです。株式会社KAKEAIが運営しています。これから管理職に就こうとしているリーダーに、マネジメントとは何かを感じ取るための、様々な考え方や理論、組織を牽引するリーダーの考え方を幅広く紹介します。多様性を楽しみ、解なき複雑な時代に挑むリーダーを応援します。

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