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マネジメントを変える

部下の「これがやりたい」に寄り添うマネジメント

「NEC Future Creation Hub」センター長として、多くのメンバーと共に顧客の課題解決や社会価値創造に向き合っている、野口圭さんの考える「マネジメントとは何か」を伺いました。
本連載では、幅広い業界のリーダーに、「マネジメント」についてお話をお伺いし、これからマネジメントに携わる人たちに、ナレッジとして共有します。

●紹介文
野口 圭(のぐち けい)
顧客との共創による社会価値創造を目的としたNEC Future Creation Hubのセンター長を務める。顧客との共創セッションは、年間約200回に上る。

マネジメントとは、部下に寄り添うこと

ーーずばり、マネジメントは何だと思いますか。

「マネジメントそのものではありませんが、意識していることがあります。部下に寄り添い、部下の「これがやりたい」という自発的な気持ちを尊重することです。組織として大きな成果をあげたり、本人の成長を実現する為には、それが最も重要な要素だと考えています」

ーー部下に寄り添うという部分で、他にも意識していることがあれば教えてください。

「やはり「自分でやりたいと思う気持ち」、つまり内発的動機の確認を意識しています。その為に徹底的に部下と会話をするし、観察をします。マネジャーの大切なミッションの中に組織力を高めるということがあります。それを実現するために最もシンプルでパワフルな要素が人の「やりたい」という気持ちだと思っています」

「地位、名誉、お金、のような外発的動機ではなく、自分の人生でやるべきミッションに気づき、それに紐づいた仕事をすることが一番重要だと考えています」

「例えば私がセンター長を務める「NEC Future Creation Hub」はお客様の課題とその先にある社会課題の解決を目指す為の施設です。しかし、部下の中には、『せっかくの施設なのだから、お客様に止まらず学生に何かを伝える場として使いたい』と思うメンバーもいたります。その時に、私がその気持ちを止めないということを意識しています」

「ただ、それが今の組織のミッションにどう繋がっているかは、一緒に考えるようにしています。それを私が止めた時に部下は「ああ、この組織では私は、決められた枠の中で仕事をしなくてはならないんだな」と思います。そうなると、何の可能性も生まれません」

「当然、組織としての目標やミッションを達成することは必須です。私達の組織はいわばショールームですから、マーケティングにおいてどんな位置付けで、何を求められていて、何を達成しなくれはならないのかを、定量的・定性的に定義し、ロジカルに説明します」

「その上で部下には、週に1割は組織の目標に直接貢献しない時間を作って良いと言っています。Googleのマネですね。私も、イノベーションの為にそういった『遊び』が必要であると思っています」

「でも結局、その1割の時間も何らかの形で成果に結びつくものです。例えば先ほどの『学生向けに何かを伝える場』として活用する場合も、その為の企画や運営など、部下にとっては多くの学びとなり、組織としての成果にも繋がっていきます」

内発的動機が成果と成長に繋がる

ーーさまざまな経験の中で上記のようなお考えに至られたと思いますが、特に影響が大きいとお感じになっているエピソードをお聞かせください。

「私は、NECに入社して最初はシステムエンジニアとして働いていました。その時は、『自分らしく楽しく過ごせれば良い』と思っていて仕事の成果にはあまり拘っていませんでした。ある時上司から、『家族はいるかい?君は自分の為に仕事をしているよ。家族を守る為に、君が強く、ちゃんと経済基盤を確立しないと家族を守れないよ。』と言われました。当時目から鱗が落ちた気持ちでした」

「それから、必死に仕事をするようになったと思います。少しずつ、案件を回せるようになっていきました。しかし人生甘くないもので、数十億円の大規模プロジェクトのPMOリーダを任された時、プロマネとして歯が立たず、多くの方に迷惑をかけることになります」

「この案件クラスのプロジェクトで成果を出している人は、本当に命をかけるような思いで仕事に取り組んでいます。そのレベルで自分自身ができていないこと気づき、更に仕事のギアを上げようと思った時、ふと思ったのです。自分はこの先10年、15年とシステムエンジニアとしてやっていきたいのか。何を本当にやりたいと思っているのか」

「それは漠然としているのですが、『お客様とのコミュニケーション』だったのです。ギアを上げるなら、自分が本当にやりたいことに舵を切ろうって思ったのです」

「すぐに、社内公募の募集部門を探し、当時品川にあったNECのショールームを見つけました。ここなら、四六時中お客様とコミュンケーションできると直感し、応募しました。それまでの職場の皆に申し訳ない気持ちもあったのですが、お前は、そっち方が合っていると本当に温かく送り出してくれました」

「ショールームの仕事は、私の想像通りで、やりたいことをやれる幸せをかみしめる毎日でした。その後は、やりたい仕事をできる感謝の思いから、『頼まれたら断らない』をモットーに、真剣に仕事に取り組みました」

「そして、ショールームで、やたらに楽しそうに、何でもやってくれる奴がいると噂になり、一部の営業から指名され始めました。それがゆくゆく役員から、そして最後には社長、会長からも指名され、重要なお客様のアテンドをお願いされるようになったのです」

「その時に、自分の内発的動機から突き動かされ「やりたい」ということをやり続けた時に、成果を出せるのだと実感しました」

「また別な経験として、ある部下とのエピソードがあります。その部下は自分のペースで、今の業務をきちんと着実にこなしたい、というタイプでした。明確な内発的動機を持っておらず、新たなチャレンジや自身の成長にも消極的でした」

「私は『今の業務に堅実に取り組むことも組織には必要なことだ』との思いでただ、ただ伴走し続けました。それから5年が過ぎた時、ある日の面談で突然『野口さん、私は成長したいです。でも成長の仕方が分からないので、一緒に考えてくれませんか』と言ってくれました」

「これは、本当に嬉しかったです。やみくもにベストプラクティスを示したりするのではなく、本人が内発的動機に突き動かされるのを待つことが重要だと感じましたね」

「その部下がそう考えてくれた原因は明確に分かりませんが、周囲のメンバーが内発的動機から、やりたいことをやっていきいきと仕事しているのを見て、触発された部分があったのではないかと思います」

マネジメントは楽しいもの!

ーー最後に、これから管理職になる皆さんへのメッセージをお願いします。

「マネジメントって、楽しいですよ。仕事において、責任範囲の小さな状態での達成感は限られているんじゃないかと思います。しかしマネジャーになるとそれがとても大きくなります」

「何よりも、部下の人生を背負う訳ですから。仕事に使う時間は人生の半分くらいですから、部下の人生の楽しさは今の仕事で決まってしまうといえます。それを背負うマネジャーの責任は重いですよね。マネジメントには答えがない部分もありますから、勿論辛いことも沢山あります」

「でも、そんなことには慣れてくるものです。それよりも、組織としての成果が大きく花開くとか、部下一人一人の思いがけない成長とか、想定外の結果が出てくる、そういったことがとても嬉しいし、自分1人では得られない大きな達成感がありますよ!」

BELLWETHER

Bellwetherは、現場をなんとかしたいと思っているリーダーに向けて発信する、マネジメントメディアです。株式会社KAKEAIが運営しています。これから管理職に就こうとしているリーダーに、マネジメントとは何かを感じ取るための、様々な考え方や理論、組織を牽引するリーダーの考え方を幅広く紹介します。多様性を楽しみ、解なき複雑な時代に挑むリーダーを応援します。

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