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コミュニケーションの 質を高める

コーチングの技術とは(前編)

部下をマネジメントする立場になると、多くの相談が寄せられるようになります。

通常業務の進め方や納期、急に起きたトラブルの対応についての相談だけでなく、働き方や業務の目標、異動・転職も視野に入れた人生相談を受けることもあるでしょう。

そんなときに「部下をよい方向へと導けるマネージャーになれたら」と思うものの、いざ話してみると、相手からは前向きな意見が出てこなかったり、うまく話がまとまらなかったり、よいアドバイスができなかったりして悩む人は多いものです。

そんなとき、覚えておきたいスキルに「コーチング」があります。

部下育成にコーチングが必要な理由

コーチングという言葉をご存じの方は多いでしょう。

しかし、誤解されている場合もあります。たとえば「相手の話を聴けばいいだけだから簡単そう」と思っている人もいれば、自分が望む方向に会話をコントロールできる方法だと思っている人もいます。それはもちろん間違いです。

コーチングとは「人の意見を引き出し、相手の成長を促すコミュニケーションスキル」です。

相手が何らかの課題や目標を抱えて行き詰まっているとき、コーチングの手法を使って話しかけることで、相手に「どうすればそれを解決できるのか」を自分の力で考えさせ、課題克服や目標達成に向けて前向きに行動するように導くことができます。

そのためには「話を聴く力」と「質問する技術」が必要になります。

経験を積んだマネージャーは、つい部下の代わりに答えを出したり、話を聴いているつもりが「私はこうしてきた」と自分の経験ばかり話したりしがちです。

それでは部下が、自らの力で考えることなく解決法を得てしまい、成長につながりません。

人は行き詰まっているときこそ、成長のチャンスです。

悩みや迷いに対して、いつまでもマネージャーが指示を与えているだけでは、部下は「どうせ上司がやり方を指示するから」と自分で考えなくなってしまいます。

下手をすると、もし部下がその指示に納得がいっていない場合は「やらされている」と不満を抱き、士気を下げかねません。

マネージャーが部下にコーチングをおこなう目的は、対話を通して部下が自力で目標や課題、ゴールへの道のりを見出し、前向きに行動できるようになること。

マネージャーはあくまでサポート役です。

問いかけ、時に意見を述べますが、手取り足取りやってあげる必要はありません。

部下が「○○マネージャーと話していると、いつの間にか思ってもみなかったような解決策が思いつくな」と思えて、さらに「自分で考えた解決策だから頑張れる」と前向きに努力を重ねられるようになることが目的なのです。

コーチングの大切な心構えとは?

コーチングに必要なのは主に「話を聴く力」と「質問する技術」です。しかし、そのスキルを磨く前に覚えておきたい大切な心構えがあります。

あなたが「苦手な取引先がいて、どうすればうまくやれるだろう」と迷っていたとき、マネージャーから「相談に乗るよ」と声をかけられたと想像してみてください。

もし、どんなに頑張って話しても、相手が威圧的だったり、なにかと「でもそれってさ」と否定されたり、相手ばかりがしゃべっていたり、勝手に結論を出されてコントロールされたり、正論ばかりで追い詰められたりしたら、話す気をなくすのではないでしょうか?

コーチングをおこなうとき、部下に対して「よく見せたい」「立場をわからせたい」「勝ちたい」という気持ちはなくしてください。

目的はあくまで、部下の成長にあります。

そして大切なのは、話をするときは相手の可能性を信じ、否定しないこと。

そして、相手の立場に立って話を聞き、共感を示すこと。

経験上「こうすればいいのに」と思っても、横やりを入れず、質問を重ねて相手の話を引き出しましょう。

どんなに実現不可能そうなことで悩んでいても、「きっとできるよ」と信じて話を聴けば、それは相手に伝わるものです。

自信がなくても「自分だってできるかも」と感じられ、部下自ら前向きな意見を出しやすくなります。

結果的に部下自身、自信をもって仕事に取り組めるようになるのです。

コーチングをする前には、一度ご自身が若手だったころを思い出してみてください。

そのときに「こんな上司がいたら、考えを正直に述べられるな」と想像してみるとよいでしょう。

※参考資料
『リーダーのための! コーチングスキル』谷益美(すばる舎)
『クライアント満足を10倍にする カウンセリングとコーチングの合わせ技』倉成央・谷口祥子(秀和システム)
『河合隼雄のカウンセリング入門』河合隼雄(創元社)

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