ダメ上司7タイプにならないために知っておくこと
現場リーダーからマネジャーになる時、知っておくべきこととは何でしょうか。「世界基準の上司」や「ゼロ秒思考」など、著者累計95万部を超えるブレークスルーパートナーズの赤羽雄二さんにお話を伺いしました。マネジャーになる前から意識すること。なってはいけないダメ上司の特徴7タイプ。部下との信頼関係を築くためのポイントなどです。
デキる上司とは「仕事ができてパワハラしない」上司。そのために「部下の話をよく聞く」ことが重要だと強調しておられました。
●紹介文
赤羽雄二(ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクター)
東大工学部卒業後、コマツにてダンプトラックの開発に携わる。スタンフォード大学大学院に留学後、マッキンゼー入社。ソウルオフィスをゼロから立ち上げるなど、14年間活躍。その後、ブレークスルーパートナーズ株式会社を共同創業し、ベンチャー経営支援、大企業の経営改革、幹部育成、新事業創出に取り組む。韓国、シンガポール、インド、ベトナムなどの企業を支援。 著書に『ゼロ秒思考』『速さは全てを解決する』『変化できる人』など国内21冊、海外21冊。合計95万部超。
内外での講演多数。東京大学、早稲田大学、電気通信大学、北陸先端科学技術大学院大学講師。
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マネジャーになる前に知っておくこと
——マネジャーに求められることは何ですか。
「マネジャーにとって一番大切なことは、自分の部署のKPIを達成することと、自分の部下を驚くほど成長させることです」
——プレイヤーからマネジャーになる時に気をつけることはありますか。
「会社にとっては、早い段階からプレイヤーをマネジャーに育て始めることが重要です。プレイヤーは、基本的に何もかも自分でやる必要があります。一方で、マネジャーは、自身も動きながらチームやメンバーを活かし、全体の力を最大限に引き出して成果につなげる必要があります」
「プレイヤーのときから、上司の立場で考えることが成長につながります。そのためには、上司だったら、経営者だったらこの仕事にどう取り組むかというテーマで、毎日数ページ、A4メモを書くことです」
「それに加え、視野を広げるために、月に何回かは勉強会、講演会やワークショップに参加する必要があります。自分の仕事、業種、職種以外の人と話すことで視野が広がり、ネットワークも広がるからです」
——上司の立場で考える際に気をつけるべきことは何でしょか。
「上司だったらこの仕事にどう取り組むか、どういう情報を集めるか、どういった価値基準で進めるか、ボトルネックをどう解消するか。上司になりきって考えることです。そうは言っても、ただ考えることはむずかしいので、A4メモを書くと割合うまくできます。上司だけではなく、社長ならどう考えるかということも、ぜひときどき考えてください」
「マネジャーになってから視座を高めようとしても間に合いません。プレイヤーのときから上の立場で常に考えることがお勧めです」
ダメな上司7タイプの特徴
本書の中では、ダメ上司の特徴について7つのタイプで紹介されていました。それぞれの特徴を紹介します。
タイプ1:あいまいな指示しかしないダメ上司
あいまいな指示でも部下が観察し、上司の求めていることを叶えてくれることを期待する上司は多い。情報量の少ない環境下で仕事を進めるのはストレスが大きく、当然のことながら推察で仕事を進めて上司の希望をかなえることはできない。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p16)
タイプ2:部下を水に投げ込み、自力で泳ぐことを期待するダメ上司
部下にむずかしい仕事を与え、ほとんど支援もせずに、自力でやり遂げることを求める上司もいる。部下をまず水に投げ込んで、自分で泳ぐことを期待する上司だ。部下の力が十分にあり、経験も積んでいれば大して問題もないが、実際は、慣れない部下でも突き落とす。そういう扱いのほうが部下が育つと勘違いをしている。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p17)
タイプ3:「部下は上司のために存在する、仕事する」と考えるダメ上司
「部下は上司のために存在する、仕事する」と考える上司も非常に多い。何を勘違いしているのか、部下のプライベートまで含めて自分がすべてコントロールできると考えている。多分、部下は自分のために存在すると考えている。部下の気持ちに何の配慮もない。考えてみることすらしない。こういうタイプに限って自分の上司にはぺこぺこし、自分の部下には威張る典型的な弱虫上司だ。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p17)
タイプ4:部下育成を考えたことのないダメ上司
部下には仕事をやらせることしか考えず、部下の育成に関しては、ほとんど考えたこともなければ、助言したこともない、という上司も多そうだ。部下育成など自分の仕事ではない。「育つ部下は勝手に育つ」と思っている。目の前の仕事をこなすので精いっぱいで、部下をどれほど成長させるかも会社からの重要な期待であることはほとんど目もくれない。この部下が自分の部下になって何年くらいだったら、思い出そうとするが記憶がさだかでない。「文句も特になさそうだし、今のまま仕事をやってもらえばそれでいい」という考え方でしかない。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p18)
タイプ5:部下を育成すれば、自分のポジションがなくなると考えるダメ上司
部下を育成すると、自分のポジションを取られるのではないかと恐れ、あえて育てない馬鹿な上司も結構いる。自分に自信がなく、部下の方が仕事ができるのではといつも心配している。なので、それ以上育って目立ってもらっては困る、という気持ちで、いつも気が気ではない。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p18)
タイプ6:部下の足を引っ張るダメ上司
この世には、恐ろしいことに部下の足を引っ張る上司がいる。部下を活かしてチームの成果を最大化することを考えるのが普通だが、自分のポジションに自信がなく、部下の能力や人望を妬んでいたりすると、部下が成功しないよう、あの手この手を使って足を引っ張る。足の引っ張り方がまた巧妙なので、部下や周囲にはあまり気づかれない。一部の人には見抜かれているが、伏線も張ってあるので、めったなことでは察知されないように仕組んでいる恐ろしい上司だ。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p19)
タイプ7:部下育成を上司に要求しないダメ「上司の上司」、ダメ会社
上司の問題だけではない。会社によっては、上司に対して部下育成を全く要求しないどころか、そういうことは手間がかかって結果につながらないからやめろ、という4時までするところもあるかもしれない。そういう場合、上司は、自身の業績をあげることに集中しがちで、「部下の面倒まで見ていられない」という気分にもなる。上司の上司や、会社側が要求しないと自主的に取り組むことにはハードルがある。
赤羽雄二『世界基準の上司』( 2015, p19)
——ダメ上司7タイプにならないために気をつけることはありますか。
「上司だから偉い、威張ってもいい、部下に対して何でも要求していい、というのは誤解です。そのような考えを持っている人は、確実にダメ上司になります。ただ、これを避けることはそれほどむずかしいわけではありません。部下の話をきちんと聞くだけで素晴らしい上司になれるからです」
「部下に信頼され、コミュニケーションもよくなり、パワハラを避けることができます。もちろん、普段から問題解決力を常に鍛えておくとか、自分の上司の立場で考える習慣をつけておくとか、上司としての力をつけておくことは大前提です」
部下のやる気を引き出すために
——部下のやる気を引き出すにはどうしたらよろしいでしょうか。
「部下のやる気がなくて困っている上司が多く、いつも相談されます。ところが、この問題はあきれるほど簡単に解決できます。部下の話を真剣に聞くだけで部下はやる気を出します。もちろんうわの空で聞いてはいけません」
「早く終わらないかなと思いながら聞くのもだめです。人として真剣に向き合って、何を言いたいのか、何を悩んでいるのか聞いてあげるのです」
「それだけで、部下の態度は激変します。部下の不満の上位に『上司が話を聞いてくれない』というものがあります。この人に言ってもダメだと思うと、上司への信頼も下がり、仕事へのやる気も低下します。その逆をいくのです」