「1on1の初期症状」への処方箋
組織マネジメントや部下育成において、1on1の重要性がますます語られるようになってきています。数年前から海外で1on1の導入が始まり、日本国内でもYahooやパナソニック、楽天などが先進的な人材マネジメントの取り組みとして始めたことで、導入企業が増えてきています。
一方で、仕組みは導入したけどうまく機能しない、研修したけど現場のマネジャー任せっきり、号令だけになっている、など実際には多くの課題を感じているのではないでしょうか。
特に、1on1の当事者であるメンバー自身がその意味や目的をわからないまま、仕組みや研修だけが一人歩きしているようにも見受けられます。
だからこそ、マネジャーが最初に理解しておくべきことは、メンバーが1on1をどのように感じているか、ではないでしょうか。
今回は、1on1を導入時にメンバーによく見られる「初期症状」と、マネジャーとしてどのように向き合うかについてのヒントをご紹介します。
「何を話せば良いかわからない」
まず一つ目が「上司と何を話せば良いかわからない」という声です。
1on1はメンバーのための時間、話したいことを話す時間と言われても、上司に何をどこまで話すかわからない人も多いと思います。
そこには、今の上司との関係性だけでなく、過去の上司との関わり方、関わられ方が大きく影響しています。
導入直後は話したいことがなくても、モヤモヤすることがあっても気にする必要はありません。この段階で1on1って意味あるのかという疑問も出てきますが焦る必要はありません。
もちろん、コーチングスキルを持っていたり、最初からメンバーの考えや悩みを引き出せる人もいますが、誰もがすぐにできるわけではないと思います。
そんな時に誰でも出来るのが「選択肢」を用意することだと思います。キャリアのことも、プライベートのことも話して良い。考えがまとまってなくても、ただ話を聞いてほしいだけでも良い。たったそれだけかもしれませんが、「選択肢」があるだけでメンバーは安心して話せるようになるものです。
「選択肢」を与えられ、「これも話して良いんだ」「それを求めて良いんだ」という気持ちの変化だけで、どんどん話をしてくれるようになるものです。すると、「話すことがない」と言っていたメンバーが30分経っても話終わらないというのはよく耳にする話です。
すぐに効果を感じにくい時間かもしれませんが、「選択肢」を与え続け、メンバーに「これも話して良いんだ」「あの話もしたいな」と思うようになってもらうことが、1on1を有意義にするための第一歩なのではないでしょうか。
「時間をとるなら業務の相談がしたい」
二つ目が「時間をとるなら業務の相談がしたい」という声です。
1on1は業務以外の話をする時間としての位置づけも大きいですが、最初は業務の話だけをするメンバーも一定数います。これは決して悪いことではなく、メンバーが業務の話を一番したいと思っていればまずその話をしっかりと聞いてあげるだけで良いと思います。
ただ、その時にマネジャーとして振り返ってみると良いことが2つあります。
一つは「そもそも業務の話をする時間を十分に取れていたか」、もう一つが「メンバーが期待する関わりが出来ていたか」ということです。
1on1を導入した時にメンバーが業務に関する話ばかりするのは、メンバーからの一つのサインだと思います。というのも、そもそも業務に関する話が十分出来ていると思っているメンバーは少ないのではないでしょうか。
業務に関する話が多い時は、その相談にしっかりと乗ってあげましょう。それらを積み重ねていく中で、目の前の業務がスムーズになるだけでなく、時間をとってくれる安心感から少しずつ業務以外の話もするようになります。それだけでも上司と部下の関係性にとっては大きな変化なのではないでしょうか。
そして、もう一つ大事なのが「どのように関わるか」です。業務の話を一つとっても、「報告するだけ」「一方的に答えを言うだけ」など、メンバーにとって不十分なことも多いようです。
業務の話が多い時こそ、どのような関わり方を求めているか、普段の関わり方だけで良かったのか、を考えるきっかけにしてみると良いのではないでしょうか。
今回は「1on1の初期症状」と題して、1on1導入時に起こるメンバーの反応をもとに、関わり方の具体的なヒントについてお話してきました。
「焦らず時間をとる」「話す内容の選択肢を与える」「関わり方のパターンを増やす」といったシンプルなアプローチですが、ぜひ「初期症状」が見えた時の参考にしてみてください。