HRテクノロジー大賞とは
近年、注目を集めるHRテック市場。国内のHR分野におけるサービスは、450個を上回ります(2020年現在調査)。2023年度には1000億円以上の市場規模になると予想されており、その後も年間40%の成長が見込まれています。
数あるHRテックサービスの中で、優れたものを表彰するアワード「HRテクノロジー大賞」について、最新情報をまとめます。
HRテクノロジー大賞とは
2016年に創設された「HRテクノロジー大賞」は、今年で5回目の開催となります。HRテクノロジーや人事情報の活用において、優れた取り組みを表彰します。
経済産業省や株式会社東洋経済新報社などの企業が後援しています。過去の大賞には、日本オラクル株式会社、株式会社日立製作所、楽天株式会社などの企業が受賞しています。
2020年の大賞は「日本アイ・ビー・エム株式会社」でした。2017年にも大賞を受賞しており、二度目の受賞となります。
HRテクノロジー大賞の評価基準
下記の観点で評価されます。
・技術力
いかにテクノロジーを駆使しているか
・革新性
企業に変革をもたらす革新的な取り組みか
・経営貢献
経営力アップに貢献するものか
・生産性向上
社員活用、活性化、効率化がはかられているか
・戦略性
戦略的な取り組みであるか
・社会的影響性
社会的インパクトをもたらすものか
HRテクノロジー大賞の対象分野
下記の領域におけるHRテクノロジーやビッグデータを活用した取り組みが対象です。
・採用
・人材育成
・アセスメント
・労務管理
・人材マネジメント
・タレントマネジメント
・業務効率化・高度化
過去の「大賞」受賞歴
2016年 | 日本オラクル株式会社 |
2017年 | 日本アイ・ビー・エム株式会社 |
2018年 | 株式会社日立製作所 |
2019年 | 楽天株式会社 |
2020年最新受賞結果
お待たせしました。今年の結果を発表しましょう。第5回の応募総数は62事例で、厳正な審査の結果、21事例が選ばれました。大賞を受賞した「日本アイ・ビー・エム株式会社」と、イノベーション賞を受賞した「株式会社KAKEAI」には、受賞の感想と今後の抱負を取材しました。
大賞
日本アイ・ビー・エム株式会社
【受賞理由】
IBM Watsonのコグニティブ分析機能により、膨大な量の学習ソースを迅速に統合、評価、管理し、社員の学習”体験”の質の向上にフォーカスしたラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP)である『Your Learning』。SNS機能を介して社員が自律的に学習できる仕掛けが構築されており、社員の大幅な学習時間の増加とともに、社員のエンゲージメント向上にも貢献する優れた取り組みであると高く評価されました。
【受賞コメント】
「評価いただいたことを大変光栄に思います。Your Learningは、
受賞を機に、改めてIBM社員とYour Learningの魅力や活用方法を共有し、学び続ける文化、
イノベーション賞
株式会社KAKEAI
【受賞理由】
「個人知をデータで組織知化し、展開・流通させる技術」をコアテクノロジーとし、環境変化に伴い重要性が高まる「事業と現場マネジャー・メンバー」支援の新たなソリューションを確立。「マネジャーが世界中のTipsから刺激を得られ、自身がデータを活かし行動を変える1on1の仕組み」等で、属人的なピープルマネジメントを変革。これまでにない事業と従業員視点でのテクノロジー活用でありつつ、利用により業績+33%・離職率-37%や、管理職研修費削減という成果を発揮していることが優れたサービスであると高く評価されました。
【受賞コメント】
「最高のご評価をいただき大変光栄です。KAKEAI(カケアイ)は、事業と現場マネジャー・メンバーのためのクラウドシステムです。
労働力人口減少や多様化という大きな流れに加え、昨今の新しい働き方への対応もあいまって、従業員一人ひとりと企業と結節点としてより一層その重要性と負担が高まる『現場のマネジャー』をピープルマネジメントの側面からテクノロジーで支援することで、働くお一人おひとり、組織、社会に貢献します。
受賞の責任と、大きなご期待に応えられるよう、私たちのミッションである「世界中の人々が、どこで、誰と働こうとも、一人ひとりがもっている人生の可能性が決して棄損されることが無い社会の実現」に向け、より一層工夫を重ねてまいります」(本田英貴氏)
採用部門
株式会社セプテーニ・ホールディングス
【受賞理由】
AI型人事システム『HaKaSe』を活用し、20年以上前より蓄積した育成方程式[G=P*E]に基づくデータから「配属先最適化モデル」を構築。この「配属先最適化モデル」を用いることで、内定出しの段階で各学生の最適な配属先を算出し、2019年新卒採用より入社後の職種と配属先を内定時に提案する「ジョブ型新卒採用」フローを適用し、確実な戦力化に向けて最適化した形で採用に繋げている優れた取り組みであると評価されました。
株式会社エイムソウル
【受賞理由】
外国人の受検者データを解析し、本人の文化特性や日本文化とのカルチャーフィット度、異文化適応力を数値化の上、適応度に応じて順位付けする独自のWEB適性検査システム『CQI』を開発。外国人採用の成功モデルを構築しており、企業は自社に最も適応する外国人材を選べ、外国人材は自分が最も適応しやすい企業に選ばれるという、ユニークであるとともに外国人材のミスマッチ防止に大きく貢献しうる優れたサービスであると評価されました。
ラーニング部門賞
ソニーマーケティング株式会社
【受賞理由】
社内の職種情報・社員の職務経験を体系化した「職種図鑑」の情報を分解し、「スキルマップ・パネル」としてセールス・マーケティング職の人材育成における社内暗黙知をデジタル化するとともに、職歴・受講歴等のパーソナルデータも構造化し、機械学習により社員にパーソナライズしたレコメンドをするなど、真のデータドリブン育成施策の展開を可能にし、自社のビジネスに貢献する優れたラーニングシステムであると評価されました。
日経FTラーニング
【受賞理由】
実践的な知識やスキルのインプットと国内外のビジネスパーソン同士を繋いで行うハイレベルなグローバル人材を育成するアクティブラーニングサービス『Excedo』(エクセド)。「自己学習(マイクロラーニング)」+「実践演習(チャット+ビデオ会議)」形式の学習サイクルを繰り返し、スマホ完結により低コストで英語によるビジネスコミュニケーションスキルを体得でき、国内にいながら海外さながらのビジネス体験環境を実現できる革新的なラーニングサービスであると評価されました。
人事システム部門賞
株式会社ディー・エヌ・エー
【受賞理由】
内製ツール開発チームを立ち上げ、パルスサーベイ、タレントマネジメント、360°フィードバックなど多岐に渡るプロダクトを開発し、現場からのフィードバックを元に持続的に改善し続けている。また、既存データとの連携を実現するとともに他システムとも柔軟に連携できるツールとし、自社のビジネススタイルにスピーディーかつ柔軟に対応するために、独自システムを内製で構築したことが革新的であると評価されました。
株式会社無限
【受賞理由】
書類を電子化し、共通ワークフロー上で承認・決裁を行うことで合理化と省力化を実現。システム導入によりトータルで年間約240時間もの作業が削減される事例もあるなど、社員の働き方改革に貢献するとともに、企業内ガバナンスを可能にした統合ソリューションであり、600社以上の70万ユーザーに利用されるなど数多くの導入実績を持ち、現場目線の優れたサービスであると評価されました。
アナリティクス部門賞
クアルトリクス合同会社
【受賞理由】
組織や個人のデータ収集から集計・分析、それに基づくアクションまでを、同じプラットフォームで運用できる唯一のテクノロジープラットフォーム『Qualtrics EmployeeXM』。専門家が開発した設問を活用して、エンゲージメントをはじめとする様々な従業員体験を分析することで課題領域と推奨される対策を提示し、効果的な改善活動を実現。さらに顧客体験上の課題と関連させて従業員に対する施策立案を支援するなど、幅広く柔軟なプラットフォームであると評価されました。
パナリット・ジャパン株式会社
【受賞理由】
多額の予算をかけられない企業でも、データに基づくより良い意思決定をサポートするシステム『Panalyt(パナリット)』。人事データの他、営業データ等も連携し、傾向把握だけでなく因果関係や要因推定まで対応できるとともに、数千名企業のデータでもクエリスピードを5倍改善するなど優れた技術力や、システム導入により人事の論点が進化するとともに、約60%の費用削減するなどの大きな効果を上げている優れたサービスであると評価されました。
人事マネジメント部門賞
KDDI株式会社
【受賞理由】
深層学習により社員約12,000名から作成するメンタル不調予兆者リストを用いて優先順位を付け、「社内カウンセラー」による面談を実施するなど、職場環境を早期に把握し改善する取組み。不調予兆者の発見時間を最大で1/6に短縮、リスト上位100名中の42%が要サポート者と判断されるなど、メンタル不調者の早期サポートに大きく貢献するものであり、社員の心身の健康状態の把握や職場の課題解決を実践する革新的な取組みであると評価されました。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
【受賞理由】
従業員サーベイから個人の価値観および心理状態を分析し、現場マネジャーが活用できる具体的なアクションを提案するサービスで、価値観と心理状態というアナログな情報を数値化することに成功。部下の状態を把握できるとともに、マネジメントにおける提案を加えて提供することで、日常的にマネジメントに活かせる形に進化させていることが革新的であり、離職率が15%から3%に低下するなどの実績も出ている優れたサービスであると評価されました。
健康経営賞/特別賞
株式会社iCARE
【受賞理由】
アナログ業務が多く残る健康労務の分野で、「従業員の健康に関わる労務管理」を一元管理するクラウド型健康管理システム『Carely』を提供し、企業の健康労務にかかる業務負担の軽減を支援。健康診断、ストレスチェック、産業医面談などの健康情報をデジタル化し、リスク把握だけでなく、ケアまでオンラインで行えるシステムを構築しており、健康管理の負担軽減により、健康経営の普及・促進への貢献している優れたサービスであると評価されました。
楽天株式会社
【受賞理由】
リアルでの研修が難しい状況下で、約1か月という短期間に最大750名が参加する新卒研修のオンライン・リモート化を実現するなど、困難な状況にテクノロジーを活用して柔軟・迅速に対応。受講者の理解習熟度やエンゲージメントデータの収集・解析などもオンラインで行い、受講管理もリモート環境下で行う体制を構築することで、時間・場所の制限を超えた「ニューノーマル」な研修の仕組み作りを行ったことが評価されました。
地方活性賞
株式会社grooves
【受賞理由】
全国各地の人材紹介会社をネットワーク化し、1対1での商取引であった採用企業と人材紹介会社の関係を変え、クラウド上で「1対多」 の構造を構築するサービス『Crowd Agent』を提供。魅力的な事業にも関わらず知名度が高くないことにより採用に苦心している中小企業や地方企業の採用活動支援を強みに、地域金融機関等とも連携して取り組み、地方企業の採用の可能性を広げたことが地方活性化に貢献するサービスであると評価されました。
株式会社SIGNATE
【受賞理由】
実際のAI開発プロジェクトのタスクを細分化した演習課題や、コンペ形式の課題などを組み込んだ実践的なAI人材育成オンラインプログラム『SIGNATEQuest』。これを活用して広島県内で地域密着型プロジェクトを展開し、地元が抱える課題をAIで解決するためのコンペティションを開催するなど、AI人材の育成・マッチングにより地域活性化に資する取り組みを行っていることが評価されました。
奨励賞
株式会社ネットラーニング
【受賞理由】
個人のスキル・資格等を証明するデジタル証明/認証サービス『オープンバッジ』を提供。ブロックチェーン技術の活用により、改ざんを困難にすることでその信頼性を高めています。企業はこのサービスを利用してオリジナルのオープンバッジを作成・発行でき、人材育成をスキルベースで体系立てて研修を組んだり、タレントマネジメントに活用が期待できるなど、今後幅広い展開が期待されるサービスであると評価されました。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
【受賞理由】
アルバイトの採用業務にかかるコストが課題となっている中小企業・小規模事業者に対して、豊富なデータベースを活用して募集ニーズ発生から採用までを最適にサポートするサービス『x:eee(エクシー)』を提供。自社にマッチした人材に響く原稿作成ができる原稿サジェスト機能や費用をかけずに募集が出来る自社採用ページ作成機能など、テクノロジーを活用して複雑かつ多額な費用がかかる業務のコスト削減に取り組んでおり、中小企業・小規模事業者の課題解決に資するサービスであると評価されました。
株式会社ハッカズーク
【受賞理由】
アルムナイに特化した機能を搭載したSNS『Official-Alumni.com』を提供。登録プロフィールや行動・属性等を基に、それぞれのアルムナイに最適な情報を発信したり、マッチ度の高いアルムナイをサジェストしたりするなど、退職後の企業と個人の関係の再構築や強化に貢献しており、人材の流動化が加速する昨今において、退職による損失をなくす革新的なサービスであると評価されました。
パナソニック株式会社コネクティッドソリューションズ社
【受賞理由】
社員一人ひとりの業務時間や業務内容を目的に合わせた多様なグラフで見える化し、テレワーク下でのマネジメントや労務管理をサポートする『しごとコンパス』を提供。PCの操作ログを元にして時間の使い方のふり返りと、データを元にした上司とのコミュニケーションを実現し、自発的で継続的な行動改革を促進。ボトム層の行動改革を促進し、企業の生産性の向上に貢献する革新的なサービスであると評価されました。
株式会社ラクロー
【受賞理由】
PCログ等をベースに労働時間を自動算出する「打刻レス」勤怠管理サービス『ラクロー』を提供。厚生労働省より労働時間の把握方法としてその適法性を認められるなど、信頼性も高いサービスとなっています。テレワークの普及が加速する昨今において課題となっている、実態に即した労働時間管理の実現に貢献するとともに、労働時間管理の業務効率化にもつながる革新的なサービスであると評価されました。
まとめ
今年のHRテクノロジー大賞は大手企業の参加も目立ちました。
各社、AIやビッグデータ解析などのテクノロジーを駆使し、業務の効率化やサポートを図るケースが増えてきているようです。
働き方の多様化にあわせて人事領域も変化してきているようですね。