2020年HRTechサービスを課題別で分類しご紹介
ある調査によると、HRTechクラウド(クラウドやAIなどの技術を活用して人事・人材管理業務を支援するサービス)の市場規模は労働人口減少のなか、労働基準法改正を受け、働き方改革や働き方や「ヒト」の多様性を反映する必要性から、2019年度時点で349.0億円。
2018年度の256.4億円から136.1%の成長と、ますます盛り上がりを見せてます。
この記事にたどり着いた方はもちろん実際にサービスの利用検討を行ったことがあるのではないでしょうか?
利用検討段階で、導入したいクラウドの特徴や特色に基づく利点を関係者に伝えようと思っても、コスト面での違いでしか判断できず、理解されずに導入を諦めてしまうこともあるでしょう。
今回この記事では、HRTechクラウドサービスの現状を独自の解釈を踏まえ整理した『HRTechクラウドサービスカオスマップ』とともにお届けします。
HRTechクラウドサービス目的別分類
まず、個社ごとで訴求している切り口から、8つのサービス特性で分類。
分析
ここで取り上げる「分析」は、主に「ヒト」に関わる定量的なデータをクラウドにまとめ、人材情報を一元化。
ダッシュボード機能で全体を俯瞰し分析したり、クロス集計などを行い課題に対する仮説を立てることを目的としたものになります。
社員情報管理・配置
Excelで行っていた、「ヒト」の移動や変更に伴うデータ変更を簡単に行うことに特化したものになります。
他にも分析との掛け合わせで、組織の移動や配置を行ったりといった、2つの機能を2in1で訴求しているクラウドサービスが多く存在します。
人事評価・目標管理
評価シートをクラウド化。
シートそのものをクラウドで管理できることから、目標からの評価の達成度合いやその変遷をデータで可視化。
評価シートカスタマイズで、OKRやMBO、コンピテンシーなど様々な評価軸での評価をも可能にした人事評価に特化したクラウドサービスです。
人材育成・開発
ビジネスパーソンとしての立ち振る舞いなど、各種研修に特化したものや「ヒト」のエンゲージメントを測り課題点を抽出。
その状態に合わせた解決方針を見える化。「ヒト」のパフォーマンス向上や離職防止などに効果を発揮する可能性のあるクラウドサービスです。
社内SNS
上記のツールとセットになっていることが多いですが、その仕組みを社内で誰でも共有できる仕組みにし、ナレッジの共有やコメントの投稿など、「ヒト」のコミュニケーションの活性化から組織全体のエンゲージメントを高めていくことを目的としたクラウドサービスです。
採用
応募者に関するワークフローの効率化を目的としたクラウドサービスです。
それそのものが採用媒体になっているものや採用サイトとの連携で募集要項が投稿できたり、転職エージェントとのやりとりまで広くカバーしたクラウドサービスも登場してきています。
労務・勤怠・給与
主に勤怠管理や給与、労務に関するワークフローの効率化を目的としたクラウドサービスです。
交通費などの経費の申請・管理など細やかな対応を可能にしているものも登場しています。
このように、2in1での機能提供だったり、目的に大きく尖ったものなど、個社についてかなり深い部分までを調べないと分からないことが多々あることがわかります。
さらにHRにおける
トレンドキーワードで分類
ここでは、HRのトレンドとして大きく取り沙汰されている「タレントマネジメント」と「エンプロイーエクスペリエンス」で分類した考察をご紹介します。
タレントマネジメント
(Talent Management=TM)
英語で「能力・資質・才能」を意味するタレントから、経験やスキルなどの情報を人事管理の一部として一元管理し、組織横断的に戦略的な人事配置、人材開発を行うことを指し、基本的な住所、年齢、学歴、職務経歴などの情報に追加・活用することにで大きいなメリットが期待できます。
メリットとして先ず挙げられるのが、「人材の適正配置」。
人材の持つ「能力・資質・才能」を把握することで、役職に合った人材を社内から配置することが可能となり、空いたポジションに相応しい人材を素早く配置。
さらに新規の部門設立やプロジェクトチームの結成時など、適性と状態にマッチした人材をスピーディーに選択し、ビジネスを展開することが期待できます。
エンプロイー・エクスペリエンス
(Employee Experience)
エンプロイー・エクスペリエンス(Employee Experience)とは、一人ひとりが、労働環境の中で体験する経験価値のこと。
この考え方を軸に企業内で行われる様々な施策、職場環境、日々のビジネスプロセスなどにおいて得られる経験価値を高めていくことを目的に施策を検討・実践していきます。
従来の人事部(Human Resource Department)の名称をエンプロイー・エクスペリエンスに変更する企業も出てくるなど、近年注目を集めています。
トレンド軸で分類すると個社の目的・提供できる効果だけではみなさんの課題を解決できないことがご理解いただけると思います。
まず、エンプロイー・エクスペリエンスの向上を目的とし、その後タレントマネジメントにより適切な配置を行うのか?
それともその逆か?
広く大きい効果を社内で醸成するには、それぞれ点での地道な改善とその点と点をつなぎ、繰り返していくことが重要で、大きい効果は数ある単体のHRTechクラウドサービスだけでは完結しないということです。
個社ごとの特徴
ここからは、個社ごとの細かい特徴を簡単にご紹介していきます。
カオナビ
社員の個性を一目で把握できる「人材管理システム」。
キャリア・実績、特技やスキルなど、あらゆる社員情報を登録可能、顔写真と名前がパッと並ぶシンプルインターフェース、入力項目のカスタマイズなど、柔軟な社員情報の管理が可能になります。
この他にもアンケート機能やSPI受験なども可能なクラウドサービスです。
タレントパレット
採用、育成、配置、離職防止、経営の意思決定支援をワンプラットフォームで実現。
人事にマーケティング視点を採り入れ、「科学的人事戦略」を実践するクラウドサービスです。
人事情報だけでなく過去の異動歴や研修履歴なども一元管理。クロス集計や分析をクリック操作レベルで実現しているクラウドサービスです。
Tableau(タブロー)
アクションを生み出すインサイトをデータから引き出せる唯一のBI(ビジネス・インテリジェンス)プラットフォーム。
ご紹介するサービスの中で唯一HRに限定しない用途で使用できるクラウドサービスです。
様々なデータを収集・蓄積・分析・加工することに特化しています。
あしたのチーム
人事評価制度コンサルティングの「ゼッタイ!評価」と付帯の「あしたのクラウド」により、人事評価制度の構築〜運用支援までを一貫して提供している企業です。
クラウドサービスには評価シート・評価からの給与シミュレーション機能・評価者が適切に評価が行えているかを見える化する機能など、人事評価制度の運用に特化したクラウドサービスです。
HRBrain
UIシンプルさ、さらに評価シートのカスタマイズ性の高さで、OKRやMBO様々な形の評価制度に柔軟に対応できるクラウドサービスです。
評価データの集計やワークフローの管理などの機能も実装されているようです。
モチベーションクラウド
株式会社リンクアンドモチベーションが提供する、国内初の組織改善クラウド。
CMでもご存知の方もいるかと思いますが、組織状態を数値化し、PDCAサイクルを回すことで組織の問題を解決5,950社、142万人の実績を持つ組織のモノサシ「エンゲージメントスコア」で、組織状態を定量化・可視化し、See・Plan・Do・Check&Actionのサイクルを回すことを実現します。
wevox(ウィボックス)
社員のエンゲージメントを見える化し、組織を活性化。
わずか3分で実施可能なサーベイやリアルタイム集計・ビッグデータ解析による分析機能、さらにカスタムサーベイ機能などを提供するクラウドサービスです。
KAKEAI(カケアイ)
マネジャーをメインターゲットに、分析やピープルマネジメントに特化したクラウドサービス。
1on1ミーティングにおける効率化・モチベーションを促進する機能群。
セルフアセスメント機能による個人の個性の分析、その他ダッシュボード機能で、現場のコミュニケーションの質を改善が期待できるクラウドサービスです。
Unipos(ユニポス)
従業員同士が、日頃の仕事の成果や行動に感謝・賞賛するメッセージとともに、ポイントを送りあえるWebサービスです。
リアルタイムに賞賛の言葉が全社にシェアされ、オープンな場で個人の貢献・活躍にスポットライトが当たり、働きがいやモチベーションアップに繋がります。
投稿に行動指針やバリューをハッシュタグを紐づけることができ、称賛される行動内容が可視化されることで、企業の価値観浸透に役立ちます。
SmartHR
雇用契約や入社手続きがペーパーレスで完結。併せて従業員情報も自動で蓄積されます。
さらに年末調整やWeb給与明細、様々な労務手続きにも対応。
API連携など外部サービスとの連携も充実しているクラウドサービスです。
Jinger(ジンジャー)
勤怠・給与・経費管理の仕組みをクラウド化。その中でも「Jinger 勤怠」は、PC・スマホ・タブレット、ICカードなど様々な打刻可能。
さらに各種、申請承認に対して最大10段階までフローの設定など、勤怠管理におけるワークフローに細かく配慮されたクラウドサービスです。
HRMOS(ハーモス)
採用から入社後の活躍まで、様々なデータを連携。
客観的な判断に基づく「採用→評価→育成→配置」を実現することを提供しています。
その中の一部「HRMOS 採用」は、採用業務の一元管理で、オペレーションを効率化。
データによる採用活動の可視化・分析により、数値データを根拠とした採用を実現するクラウドサービスです。
Wantedy(ウォンテッドリー)
給料・待遇などの情報ではなく、職場の環境ややりがいで求職者とのマッチングを実現する、ビジネスSNS。
一般的な選考へのエントリーを促す求人媒体とは違い、まずは「話をききたい」からはじまる、応募への心理的ハードルを下げ、会って話す機会を作ることを重視したプロダクトであることが特徴です。
back check(バックチェック)
候補者の情報を登録するだけで簡単にリファレンスチェック(企業が中途採用の際に信用調査の一環として、前職への実績、人物像などを第三者に照会を行うこと)を実施することができるWebサービスです。前職での仕事ぶりを確認できることで、採用側のリスクを軽減することが期待できます。
Slack(スラック)
チャットをベースとしたビジネスコラボレーションハブ。業務に必要なメンバーのアサインは勿論、情報の共有のしやすさ、外部サービスやアプリケーションとの連携で簡単な操作や外部アプリケーションからの通知などを1ヶ所に集約。チームの生産性を向上が期待できます。
最後に
この他にも様々なHRTechクラウドサービスが存在しています。デジタル領域に対するリテラシー向上やそれぞれの特徴を適切に理解することなど、導入に際しては検討することは様々。
別のクラウドサービスから新しいクラウドサービスへの社員情報の移管・コピーの難しさなど、逆に社員情報の管理が難しくなるケースもあるので、目的と効果と機能の見極めはとても重要です。
HRクラウドサービスの選定はしっかり見極めを行うことをお勧めします。