従業員満足度調査と従業員意識調査の違いとは
会社の業績を上げ、成長していくためには、従業員が満足して働けている環境が必要です。
どれほど社員の士気を高めようとしても、社員のが向上しなければ、部署内で計画通りに成果が出なくなったり、社員同士の連携が進まなくなったたり、ひいては退職者が続出したり……と、さまざまな問題が生じます。
そんなとき、人事部や経営企画部、事業企画部などで、どのように人事制度を変えたり、多様な働き方を支える仕組みを作ったりするかを考える指標となるのが「従業員満足度調査」と「従業員意識調査」です。
「従業員満足度調査」と「従業員意識調査」とは
「従業員満足度調査」と「従業員意識調査」の調査方法は、目的に合わせて設問内容や分析方法、効かせ方が異なります。
従業員が現在の組織や職場環境、業務内容などに対して、どの程度満足しているかを計るのが「従業員満足度調査」です。
満足度を数値化することで、改善点を特定しやすくなり、組織運営や会社のルール、マネジメント手法などの改善につながります。
また、近年では、働き方改革の一環で、ワークライフバランスが実現されているかを把握する目的で実施されることも多いようです。
この調査によって、従業員が安心して活躍できる環境を整備できれば、各人が最大のパフォーマンスを発揮しやすくなり、業績アップにつながるでしょう。
一方「従業員意識調査」とは、従業員がどのような意識で業務をおこなっているかを把握するための調査です。
特定の問題解決や事業戦略の立案・策定が必要な際に、従業員が業務内容や環境に対してどのような意識で向き合っているかを聞くことで、課題に対する打ち手を考えやすくなります。
また、満足度ではなく「意識」を問うことにより、会社と従業員が対話する機会となるため、定期的に従業員や組織の現状をモニタリングするうえでも役立つ調査です。
アンケート調査の設問例とやり方
「従業員満足度調査」と「従業員意識調査」は、主に人事部や経営企画部の主管により、アンケート形式で実施します。
より的確に実態を把握するため、匿名のオンラインアンケート形式をとることが多いです。
組織の活性度を計る目的であれば、3ヶ月から1年に1回程度、定期的に実施します。
離職率の改善や生産性の向上、モチベーションの向上であれば、3ヶ月に1回程度、最低でも半年に1回程度の実施する企業が増えています。
一方、経営方針の変更や制度改定、組織改編など、大きな改革時に現状を把握する目的で、単発で実施する場合もあります。
調査目的によって、アンケートの質問項目は異なりますが、主なカテゴリーや項目には以下のようなものがあります。
設問に対する回答は、度合いに合う数字(1~10)を選択するほか、「とてもそう思う/そう思う/どちらとも言えない/そう思わない/まったくそう思わない」の5段階から選ぶ方法、さらにフリーアンサーで答える場合もあります。
総合的な満足度を問う設問例
- 今の会社で働いていることに満足していますか?
- 今の会社で働いていることを、誇りを持って家族や友人に話していますか?
- 5年後も、今の会社で働き続けているイメージがわいていますか?
経営関連の設問例
- 会社の将来性について、明るい見通しを持っていますか?
- 経営から、業務に安心して取り組むうえで必要な情報は開示されていますか?
職場環境についての設問例
- あなたの職場では、達成すべき目標が明確で、メンバーに共有されていますか?
- あなたの職場では、必要に応じて適切な業務の連携ができていますか?
- あなたの職場には、安心して相談し合える風土がありますか?
上司のマネジメントに関する設問例
- 上司はあなたに対して方針を提示し、業務の指示・指導を適切に行っていますか?
- 上司はあなたに対して、成長につながる指摘やフィードバックをしてくれていますか?
- あなたの上司は、期初に設定した目標に照らして公平な評価をしていますか?
業務内容に関する設問例
- あなたは、今の仕事をすることで個人の成長が実現できると感じていますか?
- あなたの業務量は適切だと思いますか?
- 業務を進める上で問題が発生したときに、上司や周囲の人は適切なサポートをしてくれていますか?
ほかにも、コンプライアンスや人事制度、会社に対する改善点についてなど、目的に合わせて多くの設問が並びます。なお、ことがあります。
その際は、従業員ロイヤルティ(eNPS:Employee Net Promoter Score )を把握するために特化した設問を用いると有効です。
分析方法と注意点
目的に合わせ、いくつかの分析方法があります。
全社傾向を集計するには、設問項目ごとに回答を集計し、できている点(その会社にとっての強み)と改善点(弱み)を特定します。
また、セグメントによるクロス集計をおこなう場合もあります。たとえば、年代や入社時期、部署、役職・職位など、回答者の属性ごとに設問項目別の回答傾向を特定することも可能です。
さらに、部署の上位職と一般職の回答傾向のギャップを特定すると、組織改革が必要な部署を特定できます。
この調査をおこなう際に問題になりがちなのが、結果の活用方法です。
調査によって現状を把握できたとしても、それを具体的な改善プランに落とし込んでいかなくては、調査自体がしかねません。
そのためには、たとえば業績なのか、生産性なのか、離職率なのか、社員のモチベ―ジョンなのか……何を改善するための調査なのか、最初に設定することが肝心です。
また、単純に回答を集計して分析するのではなく、満足度の高低に何が影響しているのかを特定することも必要です。
総合的な満足度と相関関係・因果関係にある項目を突きとめることで、結果をポジティブ・ネガティブに導いている要素を特定できます。
そうすれば、満足度を低くする要素を取り除くとともに、満足度を高める要素を強化する改善策へとつなげていくことが可能です。
せっかくコストと時間をかけて調査するのですから、結果に満足するのではなく、会社や部署の成長につながる打ち手につなげたいもの。
調査を実施する際には、専門家の力を借りて設計・分析し、改善に向けた具体的な方法を考えていくとよいでしょう。
(構成・文=富永明子)