ダイバーシティ&インクルージョンとは
ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion / D&I)という言葉が企業の人材活用や組織開発の文脈で使われるようになってきました。
以前は、ダイバーシティという言葉で表現されていた取組みがより包括的に進化してきています。
組織・チームの運営においてダイバーシティ&インクルージョンをどのように捉えたらよいかを考えてみましょう。
ダイバーシティとは
ダイバーシティ(Diversity)という言葉は、もともと多様性という意味です。
生物的多様性、文化的多様性などの用いられ方をすることもありますが、企業の人材活用や労働市場について人材の多様性という場合には、出身地、性別、言語、年齢、信仰などの観点から区別をせずに様々なバックグラウンドや指向の人に力を発揮してもらうような制度・環境の整備を推進していくことを指します。
1990年代に米国で広まった後、日本でも浸透が進んできました。
経済産業省が推進するダイバーシティ経営では、日本経済の持続的成長にとって不可欠な女性をはじめとする多様な人材の活躍は、少子高齢化の中で人材を確保し、多様化する市場ニーズやリスクへの対応力を高める経営と定義されています。
平成28年8月から平成29年3月まで開催された「競争戦略としてのダイバーシティ経営(ダイバーシティ2.0)の在り方に関する検討会」の報告書ダイバーシティ 2.0検討会報告書でもダイバーシティ経営は、「稼ぐ力を高める経営戦略を実行するためのもの」とされており投資家視点、人材戦略の視点でもその実践の必要性が高まっていると言われています。
インクルージョンとは
インクルージョン(Inclusion)とは「含めること」「組み入れること」という意味に加えて社会的な一体性や多様性を受け入れて一つになることという意味合いがあります。
Diversity&Inclusionとは
ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity&Inclusion / D&I)とは、組織の中でダイバーシティ(Diversity)によって多様性を高めるだけでなく、そこに属する人が個人として尊重されながら、構成員の一人としてその違いを活かし、力が発揮できるように積極的に環境整備や働きかけを行っていこうという考え方を示すものです。
自分の力を発揮できる個人が増えることで、組織としても活力を高めていくことを目指すものです。
Diversity&Inclusionの取り組み方
ダイバーシティ&インクルージョンの取組みでは、組織風土の醸成と人事制度の整備・運用、従業員個々人のスキル強化の3つの軸によって展開されます。
組織風土の醸成については、経営層の考え方について社員に対してメッセージを出すほか、講演や他社の取組みを勉強する機会を設けるなどの施策を行います。
従業員意識調査の設問に全社や所属組織におけるダイバーシティ&インクルージョンの推進レベルを定量的に把握し、啓蒙を進めていくことも有効です。
人事制度としては、在宅勤務、テレワーク、フレックスタイム制などによって、自分の仕事スタイルやプライベート環境を含めて個人のライフイベントに応じた働き方を状況に応じて選択できるような制度を導入していきます。
制度の導入時には試験的に部署ごとにトライアルをすることによって、全員が利用してみることによって活用しやすい環境づくりを進めることも必要です。
また、制度利用者同士が情報を交換できる機会を設けて、制度のより効果的な活用方法に関する知見を組織内に流通させるほか、より良い制度作りに向けた意見を収集することで制度の企画・運用のPDCAをまわしていくことが求められます。
従業員個々人のスキル強化については、新たに組織に加わった社員に対して、会社として大切にしたい考え方やコミュニケーションの研修を行います。
集合研修やE-learningによってケーススタディを重ねることで、実践的な対応法を習得していくことを目指します。
また、マネージャー(上司)に対しては、管掌する組織・チームの部下に適切かつ効果的なマネジメントを行うための考え方やコミュニケーションスキルの研修を実施することが有効です。