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チームを強くする

マインドフルネス入門 なぜマネジャー職に必須?

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グーグルやインテル、ゴールドマン・サックスなど、大手企業が研修に取り入れたことから話題となった「マインドフルネス」。ストレスフルなビジネスマンにとって、マインドフルネスは習得したい、重要なスキルのひとつと考えられています。

とくに日本では、多くがプレーイング・マネジャー。自身もプレーヤーとして個人の成果を出しながら、部下の育成やフォローをしてチームとしての成果も出さないといけません。全方位的に目を配る必要があり、常にやることがいっぱいで、頭の中が散らかった状態…という方も多いのではないでしょうか。

今回から、3回連載で一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事・荻野淳也さんにお話をお聞きし、仕事に役立つ「マインドフルネス入門」を教えていただきます。

●紹介文
荻野淳也さん
一般社団法人マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事。外資系コンサルティング会社、ベンチャー企業役員を経て企業。Googleで生まれたリーダーシッププログラム「Search Inside Yourself」の数少ない認定講師で、リーダーや組織の課題解決や変容を支援している。

脳は仕事中も別のことを考えている

マインドフルネスと聞くと「瞑想するもの」「癒されるらしい」と連想する方は多いですが、荻野さんは「それはマインドフルネスの表面的な部分でしかない」と言います。

「一般に、マインドフルネスの効果として『癒されてストレスが減る』『健康によいらしい』という伝わり方をしています。確かにそれは嘘ではありませんが、マインドフルネスの本当に“おいしいところ”は、その内側にあります。

マインドフルネスとは『今、ここにいること(Being Present)』です。詳しく言うと、今の自分の心、体、周囲の状況に対して、しっかりと注意を注いでいる状態を指します。また、批評・判断を手放して、あるがままの状態を受け入れることも、定義のひとつです」

なぜマインドフルネスが、より効率よく仕事をするのに役立つのでしょうか?
「ハーバード大学で面白い研究結果があります。私たちは仕事の最中、目の前にある仕事以外のことを考えている割合って、どれくらいだと思いますか?

研究結果では、47%という数字が出ました。つまり私たちは仕事に向かっているとき、約5割も別のことが頭の中を占めている状態なのです。この状態は『マインド・ワンダリング(Mind Wondering)』または『モンキー・マインド(Monkey Mind)』とも呼ばれています。心がさまよっていて、お猿さんのように落ち着きがなく、あちこちに散らかっているイメージですね。この状態では、幸福感を感じにくいとも言われています」

自分のことだけでなく、部下やチーム全体に目を配らないといけないマネジャーにとって、頭の中が混乱状態になるのは避けたいところです。

「忙しいマネジャーは5割どころではなく、下手をしたら6割、7割も別のことに意識が向いてしまい、頭の中は大混乱になっているかもしれません。そんな状態では、とてもパフォーマンスを向上させられませんよね? マインドフルネスを通して『今の自分の心、体、周囲の状況に対して、しっかりと注意を注いでいる状態』にいられれば、目の前のことに集中でき、ひとつひとつのタスクに対してパフォーマンスを上げることができます」

マインドフルネスの3つのメリット

荻野さんによると、マインドフルネスで「今、ここにいること」に集中できるようになると、マネジャーは3つのメリットを得られるそうです。

「まず、セルフマネジメントに役立ちます。マネジャーは、部下をマネジメントすると同時に、自分自身のこともマネジメントしなければなりません。

そのときに自分のタスクやスケジュール管理はもちろんですが、大切なのがメンタル面のマネジメントです。仕事をする上で、いかにモチベーションを高く保ち、ストレスなくマネジメントできるかが、パフォーマンスに影響を与えるかを、マネジャー職の方は理解されているでしょう。

人間はどうしても、モチベーションが下がることはあります。でも、マインドフルネスを学ぶと、下がってもすぐに上げられる『心の回復力(レジリエンス)』を鍛えられます。どんなことがあっても冷静に自分の軸を整え、気持ちを切り替えてすぐに回復できるようになるのです」

さらに、モチベーションを上げるために大切な「内発的動機」にも気づけるようになるそう。

「2つめのメリットとして『自己認識力』を高めることができます。人はそれぞれ、モチベーションを高めるための動機が異なります。お金や役職、名誉ある仕事などは外発的動機と呼ばれていますが、より重要なのは『誰かのために頑張りたい』とか『純粋にわくわくしたい』とか、情熱を感じられる内発的動機のほうです。

マインドフルネスの状態だと、自分自身のことをより深く知ることができるので、内発的動機に気づきやすくなります。私はマインドフルネスを別名『気づきの力』とも呼んでいますが、自分が本当に望んでいることや欲していることに気づくことができ、モチベーションが下がっても早めに回復できるようになります」

それでは、3つめのメリットとは何でしょうか?

「常に『今ここにいること』に注意を向けられるので、自分の心のみならず、体の異変にもすぐに気づいてケアができるので、健康状態をキープできます。そして、自分の変化に敏感になると同時に、他者の状態にも気づけるようになります。これは、部下の面倒も見なければならないマネジャーにとって、3つめのメリットです。

部下のタスク量や進捗に目を配る以外にも、マネジャーは部下の心と体の状態も見ていく必要があります。自分のことがおろそかになっているマネジャーは、他者の状態にも気づきにくく、見逃してしまいがちです。自分の心と体、部下の心と体、いずれにも気づけるようになるので、チーム管理がしやすくなるでしょう」

基本のマインドフルネス方法

最後に、初心者の方にまずトライしてほしい、基本のマインドフルネス方法を教えていただきました。「今に対する注意力を上げる練習として、まず呼吸に注意を向けてみましょう。プロセスは次の4つです」

  1. 呼吸に注意を向ける
    軽く目を閉じ、自然な呼吸に注意を向けます。無理に深呼吸をする必要はありません。自分が自然と「吸って、吐いている」ことを意識してください。
  2. 注意がそれる
    最初のうちは、呼吸のみにフォーカスすることは難しく、仕事やプライベートで気がかりなことや過去の記憶などの雑念が頭をよぎったり、周囲の音が気になったりするでしょう。
  3. 注意がそれたことに気づく
    注意がそれたら「今、注意がそれたな」と自覚します。マインドフルネスは批評・判断を手放すことが大切なので「それてしまった」と反省する必要はありません。ただ「それた」ことに気づいてください。
  4. 雑念を手放す
    雑念が生じても深追いせず、手放します。たとえば「昨日の会議で発言した内容、いまいちだったな」という雑念がよぎった場合、そこで「なぜなのか」「どうしたらよかったのか」などと深追いはせず、そのまま流します。そして気持ちを切り替え、再び1に戻って呼吸に集中し直しましょう。

最初は1~2分から始めて、少しずつ長くしてみてください。毎日の習慣として取り入れるのがおすすめです。次第に、マインドフルネス後に頭がすっきりとしているのを感じられるようになるはずです。

次回は、日々さまざまなことにイライラしがちなマネジャーに向け、怒りや不安、そわそわする心をマネジメントするためのマインドフルネス方法をお伝えします!

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