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マネジメントを変える

ダメな部下はいない 相手を信じることの大切さ

様々な業界のリーダーに「マネジメントで大切にしていること」をたずねる本連載。

「おせっかいをもっと」を経営理念にするnijitoの代表を務める鮫島さん。20代は商品企画やマーケティングに携わり、「単にモノを作るだけでなく、使う人の先にどういった価値を与えていきたいか」を大事にしてきたと話します。結婚・出産を経て起業。会社の運営において最も大事なことは「社員がイキイキする」ことと強調します。

●紹介文
鮫島 貴子(さめしま たかこ)1975年生まれ、福岡出身。大学卒業後は、こども教材の営業に従事。新卒の頃に「自分のためではなく、人のために仕事をする」という考え方を経験から学ぶ。その後、ベンチャー通販企業へ転職。自ら商品をつくり、自ら販売をするというプロセスを経験。30歳で結婚、35歳の出産を期に、髪の悩みを解決するブランドとして「haru」を立ち上げる。それをきっかけにnijitoを設立、代表取締役社長に就任。プライベートでは2児の母。

社員がイキイキと働けるように

——「社長になるつもりはなかった」とのことですが、何がきっかけで起業に至ったのでしょうか。

「結婚を機に子供ができ、あまりに忙しい日々を送っていました。子供が寝ている間に仕事ができるんじゃないかと思っていたら、全くできず。座ることもできないし、髪すら洗えない。働きながら育児して、家事をして、心も体もボロボロになりました。ワーキングマザーは本当に大変だなと思いましたね。その頃から、ぼんやりと働くお母さんに何かできないかと考えていて。ただ汚れを洗い流すだけでなく、髪も頭皮もよろこび、時短もできるオールインワンのシャンプーを思いつきました。テストマーケティングしたところ好調に売れて。投資家のオーナーから『かわりに代表やってみなよ』と声をかけていただき社長になりました。でも子供はまだ0歳。決断には1年くらい悩みましたね」

シャンプーharu。シャンプーもリンスもこれ1本。本当に楽です。

——お子様も小さいし、大きな決断ですね。どうして社長になる決断ができたのでしょうか。

「当時働いていた会社は6人の社員を抱えるベンチャーでした。経営状況も悪く、みな売上目標に追われていました。家族のため、生活のためと自分に言い聞かせて働いていて、社員はイキイキと働けていませんでした。仕事を通して自分のやりたいこととか、自分の存在価値とか、そういったものはないのかなと思えてきて…」

「社長になりたいとか、起業したいといった気持ちはありませんでしたが、社員がイキイキと働けるようにするにはどうしたらよいか考えるようになりました。世の中のお母さんが楽になるシャンプーを広げること、目の前の社員が『自分の価値を社会に発揮できる』ような環境をつくること。そんな思いから社長になる覚悟が固まりました」

現場に密着し社員の声を拾い上げる

——社員がイキイキと働くためにどんな工夫をされていますか。

「nijitoは今年で8期目になります。社員は約80名。ここ2-3年は10名ずつ増えています。急激に人数が増えたこともあり、マネジメントの段階がかわってきました。今までであれば、出社して社員の表情をみて、様子がおかしければすぐにフォローできました。しかし、人数が増えるにつれ、社員の不安や不満を拾うことが出来なくなりました」

「マネジャー職にヒアリングし、社員の年代差ギャップによるコミュニケーションのズレが問題になっていると気付きました。お互いに信頼関係を築くこと、コミュニケーションを繋げていくことが大切だと思いました。そんなズレを解消するために、1on1を入れたり、マネジャー層の合宿をしたり。階層別の相互理解を促す仕組みをつくりました。それでも、全員に目が行き届いていないのではと感じています」

——組織が大きくなると、ご自身で全体を把握するのは難しいと思いますが。どうしてそう感じているのですか。

「今までは私から話しかけたり、社員にも『何かあったら1on1を入れてね』と促せていました。けれど、テレワークでの働き方が盛んになる中で、リモートだと話しかけづらい社員もいるだろうと思い。声をあげづらくなっているのはないかと勝手に心配しています」

物腰柔らかな鮫島さん。取材は和やかに進みました。

——鮫島さんの優しさが伝ってきます。顔が見えない相手の気持ちを汲み取るために何かされている取り組みはありますか。

「社員の声を拾うために、『あのね』という社内の取り組みを行っています。メールでアンケートを配信して、私に直接思いを届けられる仕組みです。マネジャー側からすると、自分を飛び越えて部下の思いが私に届いてしまうので、マネジャー側のフォローも気をつけてやっています。nijitoでは『社員がイキイキと働き、やりがいを感じる会社にする』ことを一番大事にしています。二番目に、売上に直結するお客様の満足です。働きやすい環境が一番大切ですね。そのために現場に密着し、社員の声を拾い上げたいと日々思っています」

「人を信じる」ことの大切さ

——社員の働きやすさを重視する鮫島さんですが、昔はマネジメントにやらされ感があったそうですね。

「20代の頃に務めていた会社では、3つの部署のマネージャーを兼任し、30人の部下を抱えいました。当時は会社から課せられる目標に必死でした。売上や利益といった数字の面ばかりみて、周りもだんだんとついてこれなくなりましたね。マネジメントのやり方もわからなくて苦しかったです」

「自分の気持ちともズレていった感覚がありました。本当は社会を良くしたいとか、人を幸せにしたいという気持ちがあるのに…。成果や売上は大事だし、利益も出さないといけない。でも売上の先に社会がどうよくなるとか、売上を達成した先にみんながどんな価値を見出せるのかとか。そっちの方が大事だと思って。でないと、最終的に結果も出ないから。メンバーのやりたいことをしっかりと把握して、会社の目的とつなげてあげる。『人の存在価値を満たしていくこと』がマネジメントの基本だと思いました」

鮫島さん直筆。マネジメントとは「人の存在価値を満たす」こと。

——人の存在価値を満たしていくためにどんなことをされていますか。

「相手を信じることが大切だと思います。部下は失敗もするし、やる気がないと言うこともあります。でも、そこで怒らずに、相手を信じて、寄り添ってあげることが大事だと思います。『どうしてやる気が起きないの?』とか、『絶対できるはずだよ!』と励ましたりとか」

——「やる気がない」とか「期待はプレッシャーに感じるんです」と言う人にはどうしていますか。

「特別なことはしないです。相手への変化も急がせない。何かモヤモヤするポイントが本人の中であるのだろうし、結局、問題は会社にあると思っているので。その人に責任があるわけではなくて、環境を作れていない。課題に気づいたら自分がマネジャー陣に話をして、働き方を変えられるように取り組みます。文字通りに『信じているよ』と伝えることはしないですね。言葉として何かを伝えるのではなく、話を聞いてあげたり、相手の思考に寄り添ってあげたり。周りからは『甘すぎだ』と言われることもありますが。笑」

時折、福岡弁で話す鮫島さんは笑顔が素敵でした。

——それも鮫島さんが大切にしているおせっかい心なのですね。最後にこれからマネジャーになる人たちに向けてアドバイスをお願いします。

「人を信じる。それを大切にして欲しいです。ダメな人はいないので、全ての人に良いところがあると信じて、短所より長所に目を向ける。その人のやりたいこと、強みを把握して、会社の目的と結び付けてあげる。結局、相手を信じていないと、任せて育てることもできないので…。だからこそ、『信じる』ことは難しいのだと思います。『あなただったらできる』と誰よりも強く思うこと。必要な支援をその都度してあげること。マネジメントをする上では、とことん『人を信じる』ことが大切だと思います。最後に自分自身の未来を見据えること。目標を持って、取り組むことが大切だと考えています」

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