1. HOME
  2. チームを強くする
  3. コーチングのプロが1on1で大切にしていること
チームを強くする

コーチングのプロが1on1で大切にしていること

チームを強くする

760

今回は、大手企業や省庁で管理職向けのコミュニケーション研修等を担当しながら、経営者やビジネスマンを対象としたパーソナルコーチングを提供されていて、『コーチングのプロが教える超実践型1on1』の筆者でもある森真貴子さんにお話を伺いました。

様々な企業で活用されはじめている1on1。「具体的にどうすれば良いのか」、「上手く活用するには何を意識すれば良いのか」と悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本連載では1on1に焦点を置き、業界のプロッフェショナルの方々や、貴重なご経験を積まれている諸先輩方に、上司と部下との関係性やコミュニケーションについてご自身のお考えや気を付けるべき点について聞きます。そして、次代のマネジメントを担う皆様へ思考のヒントを提供します。

●紹介文
1978年福井県生まれ。
立命館大学法学部卒業後、東証一部上場のコンサルティング会社に入社。
中堅中小企業から上場企業まで、様々な企業の経営支援に携わり、教育事業会社や介護事業会社の役員などを歴任し、独立。
独立後、自らが代表を務める会社で部下のマネジメントに悩み、トラストコーチングスクールで本格的にコーチングを学び、最上位資格である「TCS認定プロフェッショナルコーチ」の資格を取得。
現在は、大手企業や省庁で管理職向けのコーチング研修や、あらゆる職種・階層向けのコミュニケーション研修等を担当しながら、経営者やビジネスマンを対象としたパーソナルコーチングを提供している。

大切なことは相手に興味を持つこと

ーー1on1において大切なことは何だと思われますか。

「日頃から『どれだけ部下のことを考えて興味を持てているか』ということだと思います。私は、1on1の時間が上手くいくかどうかは、始まる時点である程度決まっていると考えています」

「1on1が楽しくないな、と感じてらっしゃる方もいると思いますが、部下側としては、上司に仕事以外の話をしても良いのだろうかと遠慮してしまい、逆に上司側はそれを感じ取ってお互いにやりにくくなっている為だと感じています」

「1on1という面談の時間をかっちりと決めて、その中だけで上手くやろうとしても上手くいきません。それ以外の日々のコミュニケーションの中で部下に対して興味を持ち、その人が何を考え、どうしたいのか、そして上司としては相手にどうなってほしいのか。相手とどんな関係を築きたいのかを常に考えて行動することが大切だと思います」

「言い換えれば、日々のちょっとしたやりとりでも、立派な1on1だと思います。短くても頻度の高い会話を積み重ねることが重要です」

「日々のコミュニケーションがしっかりしていれば、時間を決めた1on1は半期や3ヶ月に一度くらいで十分だと思います。究極はどれだけゼロに近づけられるか、そして日々の会話が充実しているかだと思います」

部下は面談がしたい訳ではない

ーーどういったご経験の中で、上記が大切だと思うようになったのでしょうか。

「独立して会社を起こした時、部下一人一人との1on1を推進していましたが、3回目くらいからすぐに苦痛を感じてしまいました。部下が気を遣っていることが分かったからです」

「『本当はこういうことを話して欲しいな』と思ったことを部下に伝え、『何か話したいことあるでしょ?』と聞いてみても、『ないです』と言われてしまいました。それを繰り返すうちに、『この1on1に意味はあるのかな。何の為の時間なのか』と思うようになりました」

「ある時、部下が『面談はしなくて良いから普段の仕事ぶりをもっと見て欲しい』という気持ちを持っていると知りました。改めて振り返ってみると私は部下の皆の日頃の様子をどれだけ見られていたかなと思いました」

「そして、皆の仕事ぶりを見る中で、部下一人一人のモチベーションの源泉や、仕事以外の楽しみ、休日の過ごし方など、その人自身への興味を持つようになりました。部下が教えてくれた本や映画を自分も見てみるようにもなりました」

「それからは、部下との会話をメモに取って覚えておくようになりました。犬を飼い始めたという人には、その後の状況を聞くようになったり、また別な人については入社した年度や、誕生日について話題にすることで自然と会話が増えていきました」

「プライベートも含めて、自分に興味を持ってもらっていると感じると、部下はすごく嬉しいものなのだと思います。自分に置き換えてみても、仕事のモチベーションは職場だけではなく、家族や自身の経験等が繋がっていますから、部下の仕事だけを見てその人を理解することに限界があると思っています」

「だからこそ、部下の仕事以外の考えや背景も含めてしっかり見ることで、仕事自体への取り組みもさらにしっかりと見えてくるのだと思います。そして、直接表に見えない部分でも、様々な見えない努力を重ねているのだろうなということもわかってきます。その見えない努力をしっかりと認めることも、大切なことだと思います」

仕事で目標を持ちたくない!?

ーー1on1における印象的なエピソードがあれば教えてください。

「とある部下と1on1をしていた時、ある20代の男性メンバーが、『仕事で目標を持ってがむしゃらに努力をすることがしっくりきません』と言ったことがありました。これまで高い目標を掲げて一生懸命仕事することは当たり前と思っていた私はその時内心では、その考え方が受け入れ難く、とても腹を立てました」

「しかし、そのように彼が思うのは何か理由があるのではないかと考え、無理やり目標を持つように促すようなアドバイスはしませんでした。顔には出ていたと思うのですが(笑)」

「そしてしばらくした時、別のメンバーからこんな話を聞きました。例の彼は、実はお父様がご自身で事業をされていて、家族の為にとても苦労をして過労で体調を崩してしまったそうです。そして、それを手伝ったお兄様も激務となり、若くして脳梗塞になってしまったとのことでした」

「そして、今は彼が家族を支えながら働いている状況だということがわかりました。そのメンバーは自身の経験から、仕事で無理をして身体を壊すことで誰かに迷惑をかけるので、仕事と生活のバランスをとる必要があると考えていたのです。これを聞いた時、やはり部下一人一人に特別な事情があり、普段の表面上の関係や情報だけで判断して軽はずみにアドバイスをしても上手くいかないと、改めて感じました」

「でもこの話には続きがあって、数ヶ月後の1on1で、『やっぱり仕事でしっかりと目標を持ってみようと思います』と言ってくれました。凄く嬉しかったです。彼は最初、仕事をやり過ぎることは悪いことだと思っていたようです」

「しかし、社内で働き、他の人と関わる中で、『そうじゃない所もあるのかもな』と感じることがあったようです。そして、具体的にどのような目標を持っていきたいかを聞いて、本人に目的意識を深めてもらいました」

1on1は答え合わせの場ではない

ーー部下の方の変化を実感できて、内心は嬉しかったのではないですか?

「『分かってくれて嬉しいよ!』と言いたかったのですけどね笑」

「ただ、それをしたり、具体的な目標をアドバイスしてしまうと、部下はいつしか上司の求める答えに合わせるような思考になってしまうと思います。1on1は決して上司との答え合わせの場ではないですから。私の理想は、部下が自分に気を使わず、成長してもらうことです」

「勿論、『森さんのお陰で成長できました』って言って貰えたら、こんなに嬉しいことはないですけどね。そうではなく、自分で頑張ったという実感を持てるような関わり方が一番大切だと思います。そこまで思うからこそ、立場を超えた信頼関係が築けるんだと思います」

テレワーク環境での注意点

ーーwithコロナにおけるテレワーク環境で部下とのコミュニケーションに苦労されている方もいると思いますが、意識すべき点はありますか。

「コミュニケーションの設計と戦略が大切ですね。まず『部下とどのような関係を築きたいか』をしっかりと考えることが重要です。これが戦略です。次に、具体的に相手とのコミュニケーションの取り方を設計していく必要があります。対面で同じ職場で働いていた時には、いつでも気軽に会話ができました」

「しかしテレワークにおいてはそれが出来ません。例えば『今週は部下のAさんと、前半と後半で2回電話しよう。1回目は雑談をして、2回目では仕事の進捗具合を聞いてみよう』等という風にして、具体的なアクションを描いて設計する必要があると思います」

部下の心に火を灯す

ーー今から管理職につく人にメッセージをお願いします。

「『理想の上司』『理想のリーダー』というのは人それぞれかと思いますが、「この人についていきたい」「この人のために頑張りたい」と思われる上司を目指していただきたいなということです。上司のこれまで積み上げてきたスキルや経験で部下をリードしていくだけではなく、よりリードしていただきたいと思うのは、部下の心です」

「リーダーは後輩や部下の心をリードする人であり、部下のもっと頑張りたい、もっと成長したいという気持ちを高めていくことが大切な役割です。私自身、初めてリーダーになった時はスキルや経験で後輩をリードするものだと思っていたのですが、心をリードするものだと気付いた時に、考え方が大きく変わりました」

「そして、その重要性はマネジャーになっても同じことだと思います。ぜひ、部下の心をリードし、部下の心の機微が分かる管理職になってください。心の機微が分かるということは、どれだけ相手に興味を持てるかだと思います。ただ話が上手いとかユーモアがあるとか、まとめる力の有無ではなく、一番大切なことは、一人一人の心の機微をキャッチできることだと思います」

「また、部下に安心感を感じさせることが今は求められていると思います。安心感とは、見守るということだと思います。その上で失敗させてあげて、失敗からどう学べるかが重要だと思います。部下が大切にされているな、見守られているな、と感じる関わり方が大事だと思います」

BELLWETHER

Bellwetherは、現場をなんとかしたいと思っているリーダーに向けて発信する、マネジメントメディアです。株式会社KAKEAIが運営しています。これから管理職に就こうとしているリーダーに、マネジメントとは何かを感じ取るための、様々な考え方や理論、組織を牽引するリーダーの考え方を幅広く紹介します。多様性を楽しみ、解なき複雑な時代に挑むリーダーを応援します。

アクセスランキング

運営会社