楽しさを大切に、得意分野を生かすマネジメント
FAプロダクツなど4社の代表をつとめる天野真也さん。今では製造業のデジタルトランスフォーメーションの第一人者として、数百名の組織を牽引して日々奔走していますが、『好き』や『楽しい』と思う仕事をすることが最も大切だと話します。
キーエンス時代に若くして10名の部下を持ち、過去の失敗から、教科書通りのセオリーや理論を『押しつける』のではなく、得意分野でしっかり個人に自走してもらうことが、成長に繋がる近道であると強調します。
本連載では、様々な業界のリーダーに『マネジメントで大切にしていること』をたずねます。
●紹介文
天野 眞也(あまの しんや)
Team Cross FA(チームクロスクロスエフエー) プロデュース統括
新卒でキーエンスに入社、トップ営業を経て26歳で10人以上の部下を率いてマネジメントを経験。その後海外営業や重点顧客プロジェクトのリーダーも経験し成功を収めたのち、40歳で独立。FAプロダクツの前身である株式会社FAナビを立ち上げ、代表取締役社長に就任。Youtubeで製造業の楽しさを伝えるあまのっちチャンネルの運営も手がけており、日本の製造業を人気職種にするべく奮闘中。
好きな仕事なら、人は自走する
ーーマネジメントで一番大切にしていることはなんですか
「相手の方がどれだけ成長できるか、ということ一番大事にしてます」
「成長の意味はいくつかあるのですけど、まず一つは楽しくできるかどうか。人が成長するためには『強みを褒めて伸ばす』か、『弱みを指摘して改めさせる』かだと考えています。マネジメントとしては『楽しくて良いところを、褒めて伸ばした方がいい』と思っていてます」
「本人が得意な領域で、楽しく思えることががミッションなら、指導育成はいらないですよね。マネジメントする側は、『期待しているよ』『頑張ってね』と言うだけで、、大体いい結果出すから、あとはもう褒めてやればいいというスタンスです。」
「自分の得意なことや好きなことをやっている時の自己評価は、『まだまだ』となることが多く、好きなことだからこそ『もっとできる、もっとやれるず』という気持ちになりますよね」
「例えば、僕は人前で話すのが好きなんですけど、『話が上手ですね』と言われてもちろん嬉しいんですが、自分はもっとできるなって思ってるんです」
「好きなことをやってるとどんどん自分の中で『これもやろう』『もっとこうしよう』と活性化されていって楽しくなるものです。一方で、苦手で手を出したくないなと思っていることでもやらなきゃいけないことはあります。でも、それやってる時って不活性なんですよね」
「僕自身、『苦手なこと』や『やりたくないこと』がたくさんあります。でも、実は、『苦手』と『やりたくない』は、似ているようで違っています。苦手でやりたくないことに取り組む時は、楽しいことと違って、一生懸命やってるつもりだから、自己評価でいうと『すごい頑張った』なんですけど、人から見ると案外『ふつう』かそれ以下なんです。」
「マネジメントする時だって、相手が好きなことや楽しいことと仕事を繋げてあげられば、メンバーは、どんどん自走していくし、自分自身で『もっともっと』と探究していけるんです。」
「逆に苦手なことを仕事だからという理由でやると、ストレスも溜まり、楽しくもないから、成長していきません。」
ーーそれぞれの「好き」や「得意」を生かすマネジメントということでしょうか
「そうです。人は面白いもので『僕がすごく嫌だな』と思うことでも、その仕事が好きなだという人がいるんですよ。不思議と!」
「サッカーに例えるなら、僕が絶対フォワードやりたい!っていうのと同じくらい、ディフェンスやキーバーがやりたいっていう人がいるから、サッカーが成立する、チームも同じです」
「僕は、決して完璧な人間じゃないけど、『楽しいことをやろうぜ』と言ってメンバーが集まり、チームが大きくってくると、僕の力を補ってチームが完璧に近づいてくると感じています。そうすると、自分はますます自分の得意な分野に特化できるというサイクルに入ってきます」
「マネジメントも人がやりたくないことをまるっとやって完璧なリーダーを演じたり、全部こなして教科書通りにやらなくてもいいと思うんですよ」
「やっぱりチームにおいては、相手がやってるところを手を出すのではなく、まずは、信じて任せる。そうすれば、メンバーは『その領域のスペシャリストとして頑張る』。この信頼関係の中でチームが出来ると思っています」
「そういうチーム作りをしていると、『空いている部分を助けてやろう』とか『あなたの会社ここが足りていないから、やらせてくださいよ』という人が集まってきてくれると感じています」
「このような考え方で、なるべくメンバー自身が楽しいと思ってもらえるポジションに配属できるようにしています」
素直に楽しいと思えることを探す
ーーやりたいことが見つからない人がいたら、どう対応されていますか
「自分が何が好きかわからない時に、どういうセンサーで見極めれば良いかというと、僕は『楽しい』と思えることがいいと思うんです」
「楽しいが絶対的なキーワードで、これって意外と理屈がない。例えば、車やバイクが凄く好きな人がいる一方で、『バイクって乗らないじゃん?』『オープンカーなんて、乗らないしオープンする必要ないじゃん』って感じる人もいますよね」
「これはまさに、楽しいかどうかの瀬戸際で、必要性があるから楽しいというのではなくて、オープンカーは『開く』ってこと自体が楽しいんですよ」
「バイクも、乗ってるということ自体が楽しい。場合によっては『ここをバイクで走ったら気持ち良いだろうな』と想像するだけで楽しめることもあります」
「楽しいって素直に思えることにロジックはいらないと思ってて、楽しいと思えたらなんでもいいんだよと伝えますね」
「もちろん自分と向き合うという時間は必要で、是非、自分の内面を探求する旅もして欲しいと思っています」
「人間はいくら得意じゃない嫌いだと言ってもやりたくないこと全部やらないわけにはいかないから、そこはもちろん色々あるんだけど、でもそれに対する基本的な見方のルールさえお互いに共有ができていれば、失敗することはないと思います」
十人十色のマネジメントスタイル
ーー最後はこれから管理職につかれる方へのメッセージをお願いします。
「管理職になる時は、気負いもあって、色々なことを完璧にできなきゃいけないと考えがちだと思います」
「でも、それはむしろ逆で。やっぱり自分の得意なところを見つめて、自分が楽しいとか、自分の得意分野を伸ばしていきたいというところを認識している人は、やっぱり強い」
「マネジャーといっても色々ななタイプがいていいと思うから、自分が目指す姿とか、自分が楽しいと思う方法を模索して行けばいいと思います」