例え離れていても、チームは強くなる
ザ・コンティニューズというアカペラバンドをご存知でしょうか。Twitterの呼びかけをきっかけに結成されたバンドで、直前まで全員集まっての練習はしませんでした。リモートでの練習だったにもかかわらず、見事ハモネプ優勝を勝ち取った一風変わった実力派バンドです。
今回はリーダーのたいせーさんに、専門性の高い個人が集まったチームづくりについてお話を聞きました。リモートでの練習を通して一致団結する。ユニークなチームのまとめ方とは。
●紹介文
ザ・コンティニューズ
リーダーのたいせーさんが大学を留年し、Twitterで「留年生限定」を条件に呼びかけた6人組バンド。メンバーは、たいせーさん(ベース)、るーかさん(リードボーカル)、なおさん(セカンドボーカル)、はやかなさん(トップコーラス)、うささん(サード)、たかたかさん(パーカッション)です。
コロナ禍の状況もあり練習は全てリモートで行うも、全国ハモネプリーグ2020で見事優勝を勝ち取りました。
メンバーの立場は全員平等
——コロナ禍でのリモート練習について、どのようにチームをまとめていきましたか。
「基本的には自分が曲をアレンジしていたので、自分の中に理想像がありました。その理想像に近づけていくように練習をしました。メンバー個人の中にも、それぞれの理想像があったと思います」
「でも、どう変えていけば曲がもっと良くなるのかについて全員共通の認識を持っていました。歌っていて全体の表現の中で気になったところは、アレンジャーとして僕から伝えるようにしていました」
「とはいえ、メンバーの立場は平等です。要望を伝える時って空気が悪くなりがちですけど、特に雰囲気が悪くならずに進められたのは共通認識があったからだと思います。みんなアカペラ歴が長く、曲を作り上げるための議論に慣れているので、言ったらすぐに対応してくれましたね」
メンバーの専門性を発揮するために
——パートごとに専門性があり、それを掛け合わせて一つの曲を作るアカペラにおいて、メンバーが最大限力を発揮できるようにどんな工夫をしましたか。
「アカペラは合わせる音楽だと思われることが多いのですが、僕は専門性を追求した個々人が合わさって少し雑味がある方がハモると思っています。みんなが合わせにいくと確かに結束力は生まれるのですが、その分縮こまってしまうので」
「ゴスペラーズとかLittle Glee Monsterとかは、一人ひとり上手な人が集まって歌う時に豊かな響きになりますよね。お互いにお互いの音を聞くのは前提ですが、一人ひとりが気持ちよく歌えるようにアレンジをしました」
「例えば、それぞれのパートで少しずつ歌手のラインを入れたり、リードボーカルがお休みの時にコーラスがメロディを歌うようにしてみたり。メンバーが退屈にならないように意識しました。一人ひとりがのびのび歌えると豊かな音色になります」
「結果的に結束力やチームのレベルアップに繋がると考えています。というのも、みんな基本的には歌を歌うのが好きでアカペラを始めるんです」
「勿論それぞれ専門とするパートがあり、それぞれのパートに楽しさがあります。それでも本能的にはみん『歌詞を歌いたい』と思っているので、気持ちよく歌える箇所があることでのびのびと歌うことができると思っています」
ストレスなく活動を続けいくために
——チームをまとめる上で苦労したことはありますか。
「どうすればみんながストレスなくザ・コンティニューズを続けられるのかは今まさに考えているところです。というのも、ザ・コンティニューズって言ってしまえばハモネプに出るために有志で集まったチームです」
「ハモネプで優勝したことが今後ビジネスになるかもしれないけど、基本的には趣味の範囲内の活動です。ハモネプ優勝という大きな目標を失った後にみんながストレスにならずに活動できるような環境づくりに努めています」
「例えば僕のYouTubeチャンネルに動画を出すと、僕の利益になってしまいます。みんなにもメリットがないと無理を強いることになってしまいますよね。だからYouTubeで出た収益は勿論みんなに分配するし、ご飯代も全部僕が御馳走します(笑)」
「基本的に僕は自分はどうでも良くて、人のことを考えることが好きなタイプです。だから相手にストレスかけていたら嫌だなと思う」
「大きいバックコーラスのイベントや、プロアカペラとコラボするようなイベント企画を引っ張ってきて、みんなも僕も楽しくノンストレスでザ・コンティニューズを続けられるようにしたいです。その環境づくりが本当に大変なんですが」
相手に感謝すること
——普段のコミュニケーションでストレスを与えないために意識していることはありますか。
「僕も含めてみんな学生なので時間があると思ってお願いするのは簡単です。けれどやりたいことや、やらなければいけないことはみんな沢山あるはず」
「忙しい中でザ・コンティニューズに時間を割いてくれていることに対する感謝の気持ちは大切にしています。それはザ・コンティニューズに限らずどんな場面でも必要だと考えています」
取材後記
いつも楽しみに見ているハモネプ。ザ・コンティニューズは、敗者復活枠で決勝に出ました。メンバー全員が楽しそうで、それぞれの見せ場でのびのびと歌う姿が印象的でした。
どんなチームなのだろうと興味が沸き、リーダーであるたいせーさんに取材を申し込みました。クールな印象でしたが、テレビで見るよりもずっと柔らかい印象でした。
メンバー思いで、一人ひとりのやりがいを大切にするたいせーさん。動画編集も工夫が見られます。取材の中では、メンバーのアカペラを始めたエピソードについても話してくれました。
相手の気持ちを汲み取り、見せ場をつくる。やりがいを感じる瞬間を共有する。人間関係において大切なことは、学生であっても、社会人であっても変わらない。メンバーへの感謝を忘れないたいせーさんから、チームづくりにおける大切なことを学びました。