若手が輝く 自信をつけさせる部下育成方法
「その仕事、全部やめてみよう」という仕事の効率化と、個人の成長を促す方法が綴られている書籍をご紹介したいと思います。
小学校4年生からプログラミングを始めている著者は、大学を卒業した翌年に起業しました。それから10年以上に渡りベンチャー企業の代表を勤め、その後、クレディセゾンのCTOとして活躍しています。本書の中では具体例も紹介されており、テンポよく読み進めることができました。
ベンチャー企業と大企業を両方見てきた著者ならではの仕事の進め方や、仕事を通して出会った人たちの成長プロセス、メンバーの特性を著者自身の観点で述べています。仕事のやり方やムダを見直すことができるので、仕事をしていく上で読み返したいと思う一冊です。
今回は、本書の中で解説されている内容の中でも、部下・メンバーの育成に役立つ「ラストマン戦略」について紹介します。
ラストマンについて
●ラストマン戦略とは
「あの人に聞いてわからないなら、誰に聞いてもわからない」という
いわば最後の砦にともいうべきスペシャリストを目指す成長戦略だ。出典:小野和俊(2020)「その仕事、全部やめてみよう」ダイヤモンド社
著者によると、このラストマン戦略は新人教育にも有効とされています。配属先で覚えた方が良さそうな仕事を一通りできるようになるよりも、「これだけは誰にも負けない」領域を作ることがメンバーの育成に有効です。そうして特定の分野で他人より詳しくなることで、専門性が高まり、頼られることが増えるため、自信に繋がります。結果として、部下が仕事で輝ける機会を増やすことで、成長を促せます。
ニッチでも秀でた領域を一つ
「専門性を身に付ける」ためには、高い目標が必要そうですが、著者は「これなら一番になれる」という小さな領域を探すようおすすめしています。本書の中であげられていた例を紹介します。
「『野菜に詳しくなる』という目標は、すでに詳しい人が多すぎるため、ラストマンになることが困難です。それよりも『京人参に詳しくなる』といった、細分化した分野で、頂点を目指していくこと」を勧めています。ニッチでも一つの分野を極めることができれば、圧倒的な強みとなります。
ただし、部下が興味と意欲を持って取り組むことができない場合は、部下自身が自発的に取り組めないため、「専門性」が身に付きづらくなります。その場合は、早い段階で別のテーマに切り替えることも方法の一つです。
夢中になれることを極めよ
プライベートでも仕事でも、一つのことに夢中になると、その分野にとても詳しくなり、エキスパートとなって別の仕事につながることがあります。
例えば、2014年に放映された米国ドラマ「シリコンバレー」では、「”パソコンオタク”と呼ばれていたオレたちが、脚光を浴びる時代がきたんだ!」というセリフが出てきます。趣味が仕事に繋がり、彼らの才能が開花していくスートリーが描かれています。
今回紹介する著書の中でも、スティーブ・ジョブズがハーバード大学を退学したのち、カリグラフィーに魅せられ、のちにその知識がマッキントッシュの開発に役立った逸話が紹介されています。
彼らに共通していることは、最初から何かスキルを磨こうとしていたわけではなく、夢中で好きなことをやっていたら、いつの間にかそれが仕事につながっていた点です。ジョブズはそれが仕事につながる現象を「点と点を繋げる」と表現しました。
一見、仕事に直結しなさそうな趣味であっても、極めることで、仕事に生かせるかもしれません。何かに夢中になっている部下がいたら、積極的に応援していきましょう。能力を伸ばし、いかにして目の前の業務と結びつけるか。部下自身にとってだけではなく、企業にとっても新たな可能性を見出せるかもしれません。
見せ場で信頼を作る
部下にある程度の専門性が身に付いてきたら、「見せ場」をつくるよう促しましょう。「見せ場」というと、ここぞとばかりの舞台を用意しなければいけないように感じますが、著者は「本当になんでもいい」と強調しています。
例えば、「メールを早く返信すること」、「他の人が数日かかる仕事を早く終えること」があげられています。部下が簡単に取り組めて、日常的に続けられる見せ場の作り方を本人身に着けさせることが重要です。
まとめ
「その仕事、全部やめてみよう」で言及されているラストマン戦略について、ほんの一部を紹介しました。この本から学べることは何でしょうか。
自信が持てないと悩んでいる部下に「キミはどうしたい?」と問いかけて、漠然とした答えしか返ってこないことはありませんか。
そんな時にこのラストマン戦略を使ってみるのも一つの手かもしれません。まずは本人の興味のある分野、興味が持てそうな分野をしっかり伸ばして、専門性を身に付けさせてみましょう。
それができるようになったら、関連の仕事を「2倍速」で提出するようにしてみるなど、見せ場を作るよう促してみましょう。
そうすることで、「見せ場を作る→評価される→自信をつける→専門を磨く→見せ場を作る」という好循環に繋がります。専門性を磨くことで、部下が想像もしなかった才能を開花させることもできるかもしれません。