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リーダーとして臨む

斎藤哲也氏に聞くー哲学への初めの一歩の進め方

興味があっても手が出しにくい『哲学』。不透明な時代に注目が集まる哲学に、ビジネスパーソンがどう触れていくと良いのか?『試験に出る哲学─『センター試験』で西洋思想に入門する』、『もっと試験に出る哲学─『入試問題』で東洋思想に入門する』の著者 斎藤 哲也氏に話を伺いました。すてきな読者プレゼントもお届けします。

 

●紹介文
斎藤 哲也 氏
1971年生まれ。ライター・編集者。東京大学哲学科卒業。人文思想系を中心に、知の橋渡しとなる書籍の編集・構成を数多く手がける。著書に『試験に出る哲学──『センター試験』で西洋思想に入門する』(NHK出版新書)、『もっと試験に出る哲学――『入試問題』で東洋思想に入門する』(同)、『読解 評論文キーワード』(筑摩書房)など。編集・構成に『哲学用語図鑑』『続・哲学用語図鑑──中国・日本・英米(分析哲学)編』(田中正人著、プレジデント社)、『全体主義の克服』(マルクス・ガブリエル、中島隆博著、集英社)など。
『文化系トークラジオLife』(TBSラジオ)サブパーソナリティー、世界と日本を考える真のリーダーを育成する『不識塾』師範を務める。

自己啓発から不透明さへの処方箋に

——2010年代に第3次AIブームに突入した後、『AIは人類を超えるのか』という議論を目にするようになりました。AIと対立項としての人間を模索し定義する過程で、改めて哲学に拠り所を求めるようなムーブメントがあったと思います。そして、2020年。新年を祝った時には、誰もが想定していなかった事態となっています。先が見通しにくい時代には哲学が注目されると言われていますが、withコロナの今、テレビ番組でも特集が組まれるなど哲学に対する期待は高まっているように感じています

「これまでも、10年に1回ほど哲学書がベストセラーになっています。『ソフィーの世界: 哲学者からの不思議な手紙』(ヨースタイン・ゴルデル 著)は1990年代、池田晶子さんの『14歳の君へ―どう考えどう生きるか 』が2000年代、2010年には『超訳ニーチェ』が関心を集めました。ただ、近年の哲学ブームを見ると、過去の哲学ブームとは様子が少し違うと感じています」

「過去の哲学ブームは、個人の『自己啓発』や『自分探し』として求められていた向きが強い。『ソフィーの世界』なんて、ソフィーが『あなたはだれ?』という紙切れを見つけるところから物語が始まりますよね」

「それに対して最近は、先行きが不透明で不確実な時代に対する不安から、現代社会が抱えている困難や課題と向き合った哲学書に手を伸ばす人が増えているように思います」

「哲学書ではないけれど、ベストセラーとなったユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』や『ホモデウス』は、まさに不確実な未来に対する展望を求めて受容されている面が大きいんじゃないでしょうか」

——確かに、近年話題になっている哲学書は『究明への欲求』が根底にあるように思います。不確実さにどう対応するか?という問いが最近の哲学ブームにつながっているのでしょうか?

「いくつか背景があるかと思います。認知科学やAIの研究・実用が進み『人間の知性とは何か』『人間の仕事がどうなるのか』『AIは社会をどのように変えるのか』など、さまざまな問題が問われるようになりました」

「一方、進化生物学のように『生物・動物の延長線上で人間を捉える学問』からも『人間とは何か』が追求されるようになっています。つまり、自分探しどころか、人間探しの不安につきまとわれているわけです」

「さらには先進国でも貧困や格差が深刻な問題となり、それがポピュリズムの台頭を生み出し国内の分断を深めています。中東情勢や米中対立など、国際情勢も非常に不安定です」

「挙げていくとキリがないけれど、『世界規模で、あちこち骨折しているのではないか?』と多くの人が感じていた中で、新型コロナウイルス禍に見舞われる事態となりました。日本はそこに加えて、少子高齢化や低成長という難題も抱えています」

「このように問題が山積みの状況のなかで、『今の時代をどう捉えたらいいんだろう?』と考えた時に、単なる自己啓発や小手先のスキルではなく、人間や社会のあり方を根本から捉え直していくような哲学や思想が、ビジネスパーソンにも求められているように感じています」

「過去を見ても、哲学者が活躍した時代は、価値や概念が衝突・混乱する危機的な時期が多いんですよ。デカルト、ロック、カントといったビッグネームも、中世から近代への転換期、つまりキリスト教の神中心的な世界観と、人間の理性に重きを置く新しい世界観が衝突した時代の哲学者です。そしていまは『人間って何?』と問われている」

「さらにコロナ禍において、近代では両立できていたはずの『自由と安全』が緊張関係に入るような局面も迎えています」

「それもあって、価値や概念を再点検するなり、再定義しながら、新しく書き換えないと、時代が直面しているさまざまな壁を乗り越えられないという問題意識を持つ人が増えてきているのではないでしょうか」

哲学の批判から知る空気の読まなさ

——とはいえ、哲学に初めて触れる方にとっては、敷居が高い学問だと受け止められがちです。取っ付きにくさを乗り越えるには、動機を求めがちですが『哲学は何の役に立つのか?』こんな問いを投げがけられたら、どう答えますか?

「まず、『何の役に立つから』という理由で勉強するものではなくて、自分自身が楽しんだり、面白がったりすることが何事に対しても一番の動機付けだと思うんですよね」

「だからといって哲学が役に立たないわけではなくて、たとえば哲学の持ち味の1つは『空気を読まないで物事を批判する、物を言う』ことだと思います」

「ソクラテスもアネテの街中で議論をふっかけていたし、中国の諸子百家も相互に批判を繰り広げていたわけです。日本では、学校でも会社でも批判的なことを言いづらく、会議の場で空気を読まずに何かを言ったら顰蹙を買うのではないかと感じてしまう人も多いとは思います」

「しかし、批判とは『物事を吟味する』『棚卸しする』『再点検する』ことです。今のような時代は特に、いろんな人たちの意見や知恵が出ずに、鶴の一声で決まると危ういでしょう」

「組織のリーダーは、いかに空気を読まない意見や批判が出やすい場を作るかを考えることも重要な役割じゃないでしょうか」

「哲学者って、人類規模で空気を読みませんからね。ニーチェなんてそれまでの哲学をディスりまくったあげく、『神は死んだ』なんて恐ろしいことも言っちゃうわけです。半分冗談ですが、哲学に触れて、『ここまで空気を読まずに物を考えていいのか』ということを知っておくのも悪いことではないかなと思います」

「真面目なことをいえば、ビジネスでは、目的や時間軸が設定されて、それらを前提として思考することになります。哲学には『根本から問い直す』という側面もあるので、限定された目的から自由になって物を考えることで、『違う選択肢が見える』のではないでしょうか」

「もちろん実際に仕事をする時には、当座の目的が重要なわけですけど、煮詰まったような状況では、いったん議論や問題の前提から問い直すことで、新しい視点や思考の幅を獲得できることがしばしばありますから」

哲学とは、思考の極限追求である

——改めてお伺いしたいのですが、ビジネスパーソンは哲学をどう捉えておくと向き合いやすく、そして哲学から学びを得られるでしょうか。

「哲学のありがちな説明は『自明だった常識を疑う』というものですが、これはたいての学問に当てはまりますよね。まちがいじゃないけれど、それだと少し粗い」

「そこで最近、こういう説明もできるかなと思ったことがあるのでそれを話すと、理系の基礎研究ってありますよね。ある技術系の会社と仕事で接点をもった時に、『技術を極限まで追求する』というフレーズに触れることが度々ありました。例えば、素材を極限まで細く小さくすると、機能や触感など、実現できる価値の幅が拡がっていくというんです」

「それを聞いて、哲学も思考の極限を追求してきたんじゃないだろうかと感じたんです。思考の極限を追求していくと、あるところで概念の質感や機能の転換が起きる。基礎研究だからどう役に立つかはわからないんですが、それは理系も同じですよね。そして、基礎研究がないとイノベーションが起きません」

推し哲を見つけて、思考の踏み台に

——『思考を極限まで追求する』という哲学の定義は、目から鱗ですね。とは言え、これまで哲学に触れていない方にとっては、まずはソクラテスやデカルトが何世紀の人なのか、哲学者が使う言葉がどのような意味かを知るところからスタートすることになります。地図のようなものがないと今向き合っているものが、何なのかも把握しにくいものです。これから初めて哲学に触れる方はどのように取り組むのがお勧めでしょうか?

「いろんな入口があるので、なかなか一概には言い難いんですが……。たとえば今、会社やビジネスの中にも哲学的な思考を導入しようという取り組みも増えていて、そういった方面では『哲学史的なことを知るよりも、哲学的な思考を実践する方が大事だ』と考える人もいます」

「デカルトがどうした、カントがどうしたということよりも、『物事の問い方』や『問いの立て方』などの哲学的なクリティカルシンキングの方が重要だと。それはそれで一理あるし、そういう入り方をしてもいいでしょう」

「あるいは近年、哲学対話という取り組みが増えてきました。哲学対話というのは、10人前後で『何を言ってもいい』『発言を否定しない』『知識ではなく経験にもとづいて話す』などのルールのもとで、自由に考え自由に話すことを実践する場です。最初は子供が中心でしたが、最近は企業研修などにも取り入れられていて、哲学への入り口の一つになってきています」

「こういった取り組みと比べると、僕が編んだり書いたりしている本は、比較的オーソドックスで、歴史にそって哲学の流れをたどっていくというものです」

「これはこれで『先人たちの考え方を知る』ことであり、深く考えるお手本になると思います。何事も素手で一からやるよりは、お手本があった方が慣れやすいし、応用もしやすい。先人の哲学を鵜呑みにするよりも、踏み台にして考えることができれば、より深く考えることができるような気がします」

——本を読むことを通じて先人の思考に触れるのは、個人としても取り組みやすいですよね。しかし、先人たちの書き著した物を読もう!と決めても、一生かかっても全部を読むことはできません。高校時代に山川出版社の倫理用語集を通読していた私は、斎藤さんの著作の『試験に出る哲学 『センター試験』で西洋思想に入門する』(NHK出版新書)、『もっと試験に出る哲学 『入試問題』で東洋思想に入門する』(NHK出版新書)、編集・監修されている『哲学用語図鑑』(プレジデント社)を手にした時に『世の中の進化ってすごいな、これはイノベーションだ』と感激しました。それぞれの方が、興味に従って読むのが一番と言う前提は踏まえつつ、あえて伺います。例えば、この3冊ならどう読むのがお勧めでしょうか?

斎藤哲也氏の本はこちら

「ありがとうございます。どれも読みやすいと思いますが、『試験に出る哲学 『センター試験』で西洋思想に入門する』を読みながら、分からないところを『哲学用語図鑑』で読んでみると哲学史の大筋がつかみやすいかと」

「ついでに加えると、今まで哲学というと、どうしても西洋をイメージして語られてきました。でも、アカデミックな世界では西洋中心的な哲学研究に反省の目が注がれるようになってきています」

「それとの関連で、お隣の中国や日本がどういう哲学的な営みをやってきたのかを知るには『もっと試験に出る哲学 『入試問題』で東洋思想に入門する』ですかね。仏教思想や儒教、老子、荘子など、人生訓的に受容されることがもっぱらですが、哲学として見ても面白いんですよ」

「いまお話したように、『哲学にどう触れるか?』という入り口はたくさんあるし、人によって何が琴線に触れるかは千差万別だと思うんです。自分が面白がれる入り口を見つけられるのが一番ですよね。『試験に出る哲学 『センター試験』で西洋思想に入門する』、『もっと試験に出る哲学 『入試問題』で東洋思想に入門する』、『哲学用語図鑑』などで過去の哲学者に触れる場合は、ぜひ自分の『推し哲』を見つけてみてください」

「『もっとこの哲学者のことが知りたい!』と思えたらしめたものです。これらの本がきっかけになって、読者がそれぞれの推し哲の原書を翻訳で読むことに繋がったら嬉しいです」

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・試験に出る哲学──『センター試験』で西洋思想に入門する
・もっと試験に出る哲学――『入試問題』で東洋思想に入門する(NHK出版新書)
・編集・構成に『哲学用語図鑑』(田中正人著、プレジデント社)

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