鬼軍曹とよばれた私が社長に 倉橋美佳さん
マネジメントって難しいですよね。日々、新たな悩みが出てくると思います。世の中のリーダーは「マネジメント」をどう捉えているのでしょうか。
本連載では、幅広い業界のリーダーに、「マネジメントとは何か」を尋ねます。現場の声を取り上げ、これからマネジメントに携わる人たちに、ナレッジとして共有します。
1回目は、現場からの叩き上げで、社長までのぼりつめた、ペンシル社長倉橋美佳さんに話を聞いてきました。
紹介文
倉橋 美佳(くらはし みか)1978年、福岡市出身。九州芸術工科大学(現・九州大学芸術工学部)卒業後、2003年に株式会社ペンシルに入社。R&D事業部マネージャー、14年にCOOに就任。そして16年6月1日付で、代表取締役社長COOに就任した。
マネジメントとは、タレント育成
――早速ですが、ずばりマネジメントとはなにでしょうか?
「マネジメントとは、タレント育成だと思います。例えば、アイドルグループは、メンバーそれぞれが面白かったり、歌がうまかったり、雰囲気があったり、いろんな個性がありますよね。」
「逆に、同じ個性がそろったチームは面白味がありません。部下の苦手を減らし、得意を増やしてあげる。あなたは『何をする人か』ということをわかりやすくしてあげる。」
「個性を尖らせていくことが、メンバー一人ひとりの成長につながります。個の力をチームの力に変えていく。そうすることが結果的に会社の成長に繋がっていると思います。」
「でも、この考えに至るには、時間がかかりました。昔は、『鬼軍曹』と言われるほどスパルタだったので……。」
倉橋さんに書いてもらいました。
辞めた部下は100人以上!?
――鬼軍曹と呼ばれていた頃は、とても怖かったのですか?
「はい。部下が怖がって、逆らえないという感じになっていました。マネジャーになった頃、私はいくつものプロジェクトをかけもつ、プレイングマネジャーでした。」
「ペンシルは、WEBコンサルティング会社なので、プロデューサーとして、クライアントにつきます。当時はクライアントを成功させることに必死でしたから、クライアントの要求に応えることが第一でした。」
「24時間働いても追いつかない。睡眠時間も一日二時間ほどで、本当にしんどかった。そんな毎日の中で、部下に教えないといけないのはストレスで、『なんでできないの!』と強く責めたり、部下のアウトプットを何度もやり直させたり。辞めると相談してきた部下に対しては、『わかった。いつ辞める?』とたたみかけたり。」
「辞める人が増えるにつれ、私自身の感覚も麻痺しました。辞めた部下は100人を下らないと思います。今なら『ここまでやってきたのだから、一緒に頑張ろうよ!』と励ませるのですが。当時はできませんでしたね……。」
パワープレイの限界
――目の前にいる倉橋さんとは印象が違いますね。気さくで話しやすいです。変わるきっかけがあったのですか。
「離職率の高さは気になっていました。けれど、自分が人一倍仕事をすれば、周りも引っ張っていけると思っていました。」
「そんなある日、同僚から『一人ひとりの生産性を上げないとチームの生産性は上がらない』と指摘されました。確かに、一人のパワープレイでは限界がありました。マネジメントについて勉強するとともに、どうすれば部下の気持ちを凹まさずに、やる気を引き出せるのか考えました。」
鬼軍曹感はなくパワフルで優しい印象でした。
部下の個性を強みに変える
――具体的にどういったことをしましたか。
「まずは、部下に向き合う時間を増やしました。一人ひとりの得意なこと、苦手なことを把握し、仕事の割り振りを考えました。教育にも力を入れ、部下が自信を持って取り組めるよう、一人ひとりを立たせるよう意識しました。」
「自分が受注した案件であっても、『信頼しているスタッフだから』と伝え、任せ切ります。私も苦手なことは、周りに頼るようになりました。信頼されている感覚が部下の自信につながり、クライアントからの評価が直接部下に伝わることで、仕事への誇りにつながっていきました。」
サイトのリリース前ですが快く取材を受けてくださいました。
マネジャーになる前に学ぶ
――これからマネジャーになる人にアドバイスをお願いします。
「自分は遠回りをしてきました。マネジメントについてもっと早くから勉強しておけば、部下を何人も辞めさせずに、一緒に仕事ができたのに……。後悔しています。」
「マネジメントには、先人の歩いてきた道があると思います。私と同じように遠回りする必要はないと思うので、まずはインプット量を増やすことが大事だと思います。悩みはつきないと思いますが、自分に合うもの、合わないものを判断し、自分なりの道をつくってください。」
メンバー全員で飾り付けをしているそうです。ハロウィンとクリスマスはもっとすごいとのこと。