マネジャーの仕事|Vol.1-1自組織役割の理解
前回のVo.0では、マネジャーの仕事をフローで整理しました。
このvol.1では、フローにおける業務側の出発点である「自組織役割の的確な理解」を2回に分けて紹介します。
マネジャーは、自分一人で成し遂げられるような仕事を担っているわけではありません。チームで成し遂げるための具体的な方法や、メンバー一人ひとりの可能性や力をどう引き出すかについて、常に考え行動する必要があります。そのために、自組織が担っていることを的確に理解しなければいけません。
「どこへ到達すればよいのか曖昧」という状態では、現状の力で到達できるラインと、到達せねばならないラインとのギャップが測れません。差分を埋めるための工夫や努力が分からない状態といえます。
さらに、この状態は「なぜこれをするのか」や「なぜここまでやる必要があるのか」といったことについてメンバーに説明できません。もちろん「会社の方針だ!」という方法もとれるかもしれませんが、誰の周りにもさまざまな機会(副業や転職)が存在する現代や未来において、そのような方法は誰の幸せにもつながりません。
つまり、自組織が担っていることを的確に理解することとは、自分自身が理解するだけでは足らず、自分の言葉でメンバーへ語れるレベルまで咀嚼する必要もあるわけです。
理解しておく必要があること
マネジャーとして自分の組織が担っていることを的確に理解できていない状態とは、チームを到達させるべき場所がわかっていない状態です。
仮に、なんとなくそれらしき場所へチームメンバーと共に向かい、その過程でどれだけ頑張っても、どれだけ自分自身やチームメンバー個人の成長があったとしても、その到達点が本来担っていたものを偶然に包含仕切ってでもいない限り、残念ながらマネジャーの仕事としては及第点におよびません。
具体的には、少なくとも下記の観点で自組織が担っていることを理解しておく必要があります。「必要」とは「マネジャーなのだから、この程度のことは理解しておきましょう」という意味ではなく、マネジメントフロー全体において、自組織が担っていることを理解しておかねば「マネジャーの仕事を果たせないシーンにさらされる」という意味です(詳細は追って別の記事でご紹介していきます)
- 方針や戦略と自組織の役割の紐づき
- 前期との違いとその背景
- 自組織役割の鮮明な認識
- 定量的役割・定性的役割とも「いつ」「何が」「どうなっている状態」×MUSTとBEST
- 役割が複数存在する場合のそれぞれの重要度
- 同組織レイヤーの他組織が担う役割
方針や戦略と自組織の役割の紐づき
VUCAの時代、一度決めたことにとらわれず、常に最新の状況を直視し最善のアクションを選択・実行し続けなければならないこの環境においても、方針や戦略は存在します。
「どうせどうなるかわからない環境なのだから自由にやってよし!」ということではありません(もちろん自由にやってよし!というケースもあるかもしれませんが、「自由にやることで何かを得る」や「自由にやることでここに到達させる」という方針や戦略が存在するはずであり、「自由にやる」のは目的ではなく手段です)。
「方針や戦略と自組織の役割の紐づき」とは、具体的には「全社としては、今期Xという方針を掲げている。だからこの事業部はYという戦略を実行しようとしている。だから、私の組織はZという役割や戦術実行を担っている」ということです。
もし、あなたの組織が、たまたま全社的な方針の実行を中心で担う組織にいれば、X→Yを踏まえ、ストレートに自組織の役割をZとして言語化できるでしょう。
しかし、企業規模が大きくなればなるほど、多くの組織は全社の大きな方針とは直接的に結びつかない役割を担うことになりがちです。これは企業として当然のことですが、一見すると自組織の役割がXやYと関係しないように感じることもあるでしょう
これはメンバーも同じです。だからこそ人(=メンバー)に語れるレベルまで理解・咀嚼することが必要です。収益面で間接的に支えることもあれば、業務で直接的に支えることもあります。
より大きく捉えれば、企業の方針・戦略も、企業が社会に対して提供しようとする価値やミッション実現のための手段です。メンバー一人ひとりがここで働く動機はさまざまであるにせよ、マネジャー自身が、方針や戦略と自組織の役割の紐づきをメンバーに語れるレベルまで理解・咀嚼することは、組織と個人を繋ぐ重要な要素であり、マネジャーの仕事を果たす上で欠かせません。
前期との違いとその背景
方針や戦略は変化し続けます。少し前まで黒だったものが白になるということも当然起こり得ます。特に、不確実性の高い環境下においては、より高い頻度で変更が生じるものです。
そのような変更に際して「よくわからないけど変わったらしいよ。なんだかねぇ…」とメンバーにボヤいているマネジャーもいるかもしれません。たとえメンバーがその方針や戦略の転換に納得がいかなさそうだから同調する狙いで敢えてとっている行動だとしても、メンバーの気持ちをおもんぱかるのと、理解や説明を放棄するのは別です。
自分自身が納得や理解できない時、人に語るにはまだ怪しいと感じるレベルの時には、自分自身はもとより、あなたと共に働くメンバーのためもひるまず理解に努めましょう。
私もある事業会社で人事の管理職をしていたことがあります。次の経営を担うリーダーとして候補にあがるマネジャーはごく一部です。実はそのマネジャーこそ、方針や戦略の変更にあたって、自分自身が納得や理解できていない時や、メンバーに語るにはまだ怪しいと感じる段階における部長や事業部長への質問攻めは容赦ないものです。
しかし、ある一定のところから自分の言葉でメンバーへ語り始めます。誤解を恐れずに言うと、まるで自分がそう決めたように意思と責任を持って語り切ります。
もちろん、その場では決して「自分も納得していないけど」などという言葉は出てきません。どのような方針転換でも、うまくいくとは限りません。まして楽になる策などほぼありません。日常に突入しメンバーも苦しくなった時、自分たちで納得してこれに決めたのだという状態は、その時につくられるわけではなく、取り掛かる時の状態に左右されます。
Vol.1-2「自組織役割の鮮明な認識 」「同組織レイヤーの他組織が担う役割」へつづく