1. HOME
  2. コミュニケーションの 質を高める
  3. 「迷える部下」どうすれば自信を付けられるのか?
コミュニケーションの 質を高める

「迷える部下」どうすれば自信を付けられるのか?

前回は「自信のない部下」が陥る負のスパイラルについて、そして、部下の陥っている状態をまずはしっかり理解することの大切さについて話をしてきました。

<「自信のない部下」が陥る負のスパイラル>

私自身の部下との体験も踏まえながら
①人と比較して自分の出来ていない所に目が向く
②もっとやらなきゃと思い込み目標を高くしすぎる
という負のスパイラルの前半をお伝えしてきました。

そして、このままいくと
③できないぐらいの仕事を抱え込みできないことに目が向く
④自己肯定感が下がりますます自信がなくなる
という負のスパイラルが回り続けることになります。

だからこそ後半では、このスパイラルを止められるのか、上司ができることは何なのか、私なりの解決策のヒントをお伝えできればと思います。

負のスパイラルからの脱出方法

「自信のない部下」と関わる中で上司にできることは「やらないことを一緒に決める」、そして「教える体験から成長実感を得てもらう」ことだと思います。

もちろんそれだけで変わるわけではないですし、様々な関わり方が積み重なり、部下の成長が促されていくのだとは思いますが、私自身がAさんと関わる中で、特に大事にしていた、そして効果があったものだと考えています。

やらないことを一緒に決める

これも言うは易く、行うは難しです。会社としての目標があり、チームの目標があり、それが個人の目標に繋がっていく。楽々と目標を達成できる状況にいる人は多くないと思いますし、多くのマネジャーは何をやるか、何をやらなければいけないかに目が行きがちです。

部下と接する時もやるべきことに焦点が当たりますが、意外と部下自身もやるべきことはわかっていたりするものです。そしてやりたいと思っていることも本当は心の中に持っているものです。

だからこそ大事なことは「やらないことを決める」ことだと思います。これは目標を下げると言う意味ではなく、今できることにちゃんと焦点を当ててあげることです。今この瞬間には、できることしかできません。

最終的な大きなゴールを見ながらも、一番最初の小さいゴールに集中させてあげること。そのためには今見なくてもいいこと、やらなくていいことをしっかり分けてあげることが大事だと思います。

私自身、Aさんが常に私と同じ状態を目指さないといけないという意識が「できていないことばかりに目が向く」原因だったと気づいた時から、とにかく「やらないことを一緒に決める」ことにフォーカスしてきました。

Aさんも「自分ができていないと思う」→「もっとやらなきゃと仕事を抱え込む」→「全部中途半端になりできないことが多いように感じる」→「ますます自信がなくなる」という循環に陥っていたので、やらないことを一緒に決めていきました。

もちろん「やらないことを決める」ことも簡単ではありません。「自信がない部下」ほど会社のモノサシや周囲との比較で自分を見るので、やらないことを決めることは不安に繋がることもあります。

「やることが多い」と言いながら、「やらないことを決める」ことを嫌がる部下も多いのではないでしょうか。だからこそ、一緒に考えてあげること、「やらないことを決めること」が「できることを増やすこと」だと安心させてあげられるか、そこが勝負の分かれ道だと思います。(そのための鍵が上司が自分自身の影響に自覚的になることだと思います。)

Aさんも「やめることを決める」ことで、一つ一つに集中できるようになり、事前の準備ができるようになり、成果自体も出るようになりました。結果としてそのサイクルが回り出してから3ヶ月後には元々やっていた量より多くのことをできるようになっていました。

何より自分自身のやり方に自信を持つようになり、自分なりの強みを活かしてクライアントと関係を築き、自らのアイデアをどんどんぶつけられるようになるなど、まるで別人のように動いている姿を見ることができました。

教える体験から成長実感を得てもらう

もう一つポイントになるのが、いかに成長実感を感じられる機会を作れるかだと思います。そのための鍵がチーム内で”教え合う仕組み”なのではないかと私は考えています。つまりは身近な安心できる場を上手く活用することが肝だと感じています。

私が当時マネジメントしていたチームには6人の部下がいたのですが、私には他の部下がAさんから学べることが多くあるように感じていました。一方で、Aさん自身は私とペアで動くことが多く、自信が持てていない状態でした。

そこで、他の部下が私に相談に来るときに、あえて「Aさんに聞いてみて、よく知っているから」と伝えるように変えました。そうするとAさんに相談が行くようになり、そしてAさんは他のメンバーに教える機会が増えていきました。

これがものすごくインパクトがあったのですが、Aさんからすると私が他の部下にAさんに聞くように伝えることで、Aさん自身もその部分は私から評価されてるのだと間接的に知ることになります。そして自分に教えられることがあることに気づくことが直接的な自信に繋がります。

上司が部下の成長と組織としての成果を両立するときに悩むのが、どこまで仕事を任せるかではないでしょうか。特に社外(クライアントや取引先)とのコミュニケーションでは、受注できるかどうか、プロジェクトが上手く進むかどうか、などどうしても成果への意識が強くなり、任したいけど任せられないということも多いのではないでしょうか。(私も前に出たくなってしまう上司の気持ちが嫌というほどわかります。)

だからこそ、リスクが少ない社内の関係性の中で、教える経験を意図的にデザインしてあげることがチャンスだと思います。意外と身近にある安心安全の場で教える体験を作ってあげる。それこそが「自信のない部下」の自己肯定感を高め、成長を加速させるポイントだと思います。

チームマネジメントへのヒント

そんな「自信のない部下」への関わり方から私なりに見えてきたチームマネジメントのヒントを添えておきます。それこそが「チームの凸凹を活かして、人を通じて人を育てる」ことなのではないかと考えています。

世の中のマネジャーもメンバー一人ひとりへ最適な関わり方をしたい、できるようになりたいという思いは持ちつつも、自分自身のプレーヤーとしての業務もある、リモートワーク/テレワークの中でメンバー全員をフォローし切れない、自分にも得意/不得意がある、とマネジメントの難しさに悩みは尽きないのではないでしょうか。

だからこそ自分で全部頑張ろうとしすぎず、メンバー同士でサポートしあえる、学び合えるチームを作ることが大事だと考えています。それこそが、自分も楽になる、メンバーも成長する、そしてチームも成長するためのポイントだと思っています。

そのためにはチームメンバーの得意不得意、できること/できないことをしっかりと理解しておくことが出発点になります。マネジャーからするとメンバーより自分の方ができることも多く、どうしても自分の視点から教えたり、関わったりしがちになります。

そしてそのことがメンバーの成長の機会を奪ったり、成長実感を感じられにくくしていることも事実です。でもメンバー同士だと意外と”ちょうど良い”関係性だったりするのではないでしょうか。

メンバー同士の方がお互いに得意/不得意、できること/できないことにばらつきがあるからこそ、ちょっと背伸びするぐらいの感覚で教えることができる。そうすると教えられる側もマネジャーが教えるより次のステップがわかりやすく取り組みやすい。

そして教える側も、教えることから学びを得られる。そして何よりも自分自身の成長実感も感じることができる。

そうするとメンバー同士の理解も深まり、お互いに学び合う関係性ができてくる。結果としてマネジャーは自分が動かなくてもメンバーが勝手に成長していくので、どんどん楽になる。

さらには、マネジャー自身も自分が集中すべき仕事に集中できるし、新たなチャレンジができるようになり、チームとしてのグッドサイクルが回るようになると思います。

もちろん、すぐに結果がでず、少し我慢が必要になるかもしれませんが、つまるところ、「チームの凸凹を活かし、人を通じて人を育てる」ことがチームの成長にとって最短の道なのではないかと考えています。

自信のない部下にどう関わるか、そして、そこから見えてきたチームマネジメントのヒントについてお話させて頂きましたが、ますますマネジメントの難易度が高まり、日々悩むマネジャーの皆様にとって少しでも明るい光になっていれば幸いです

▼前編はこちら

BELLWETHER

Bellwetherは、現場をなんとかしたいと思っているリーダーに向けて発信する、マネジメントメディアです。株式会社KAKEAIが運営しています。これから管理職に就こうとしているリーダーに、マネジメントとは何かを感じ取るための、様々な考え方や理論、組織を牽引するリーダーの考え方を幅広く紹介します。多様性を楽しみ、解なき複雑な時代に挑むリーダーを応援します。

アクセスランキング

運営会社